目先のコスト削減を最終目標にするな座礁しないERP(2/2 ページ)

» 2008年03月25日 11時12分 公開
[ITmedia]
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「導入断念」も一つの判断として考える

 月刊アイティセレクトで「企業にはびこる間違いだらけのIT経営」連載中のnaoIT研究所の代表、増岡直二郎氏は、中堅・中小企業のIT導入の失敗を数多く見てきた。増岡氏は中堅クラス以下の企業のERP導入について、次のように語る。

 「『導入して運用している』という企業の中でも、実は現場ではほとんど利用しないで、別の方法で経営情報を上層部へ上げているケースも珍しくないのです。せっかく多額の費用をかけて導入したシステムはほとんど機能していない、ということも多い。どれくらいの企業がERPを導入しているのか、という話は置いておくとしても、現実にシステムをしっかりと活用している企業はそれほど多くはないはずです」

 また増岡氏は、「過去に検討し導入しない」と決定した企業について、ある面で前向きの評価を下す。

 「ERPの本質というのは、利益の最大化を追求することにあります。調達・生産・物流・販売・会計・人事などの基幹業務を統合して、関連データを一元管理する。そして経営資源を最適活用するわけです。その結果、業務内容をリアルタイムで把握でき、経営判断や経営意思決定がタイムリーにできるようになる。大規模でコストがかかるシステムを導入することが第一義ではない。導入するにしても、その前段階で膨大な数の業務を整理し、切り分け、最適な状態にしていかなければならない。こういう作業を現場のスタッフも巻き込んで進めていくには、相当のエネルギーがいる。『うちの会社にはまだ時期尚早』という判断が出てきてもおかしくはないのです」

 またERP研究推進フォーラムの主幹研究員、倉石英一氏は次のように語る。

 「経営者は業績がそこそこ良くても、常に不安感を持っています。このままでいいのか、大丈夫なのかと。そこでさまざまな経営情報を出すように指示を出す。しかしこの数字が統一されていなかったり、出てくるタイミングが遅かったりすると一体どうなっているのか、ということで焦るわけですね。そこでERPを導入しよう、パッケージを入れてみようということになるわけですが、そもそもマネジメントレベルを上げるために導入しようというものに対して、早急に費用対効果を求めてしまうケースがある」

 経営資産を統合し、情報を正確に把握し、戦略立案の助けとするべきものに、すぐに効果を求めると、どうしても「ある業務に関わっている人間を削減して別の業務に回せた」というような「効果」を作り出しがちだ。もちろん、そうした観点を持つことも大切だが、それが最終目的になってはならないと倉石氏は話す。

 「人件費全体がカットできるわけではないのだから、効率的な人材配置として見るべきです。ただそれがERPを導入する主目的になってしまっては、あまり意味がない」(倉石氏)

 また増岡氏も「ERPは効率的な経営を行うためのインフラです。ERPを基盤にして、そこに営業支援や分析システムを乗せていくことで初めて効果が出てくるものだと考えるべきです」と指摘する。

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