図1がPCルータのスループット測定結果である。グラフの横軸は、理論上のスループットに対して何パーセントのスループットが出たかを表している。
この結果から、64バイトのパケット長ではどのOSについても、フレーム転送能力が著しく劣っていることが分かる。
また、測定結果は3回の平均値から算出しているが、特にWindows XPでは試行ごとに異なる値となり、そのパフォーマンスは不安定であった。また、Linuxで比較するとカーネル2.4は動作が若干不安定だったが、カーネル2.6では非常に安定していた。
表1がPCルータのレイテンシ測定結果である。これらから、L3スイッチと比較して明らかにPCルータのパケット遅延が大きいことが分かる。特に1518バイトのパケットについては、25ミリ秒以上の遅延が発生している場合も見られた。また、別途測定を行った結果では、すべての遅延がある一定の大きさを持つのではなく、遅延のばらつき(ジッター値)が大きいようにも見られた。
この1518バイトのパケットというのはビデオストリーミングデータやWebのデータとして使用されるパケット長である。この程度の遅延レベルではそれほどクリティカルな問題にはならないものの、遅延のばらつきは、音声データや画像データの品質に影響してくるので注意が必要である。
以上の結果から、PCルータのパケット転送能力はL3スイッチと比べると圧倒的に劣っているということが分かった。しかし、この結果はさほど驚くべきことではない。なぜなら、PCルータはソフトウェア処理でパケット転送を実現しているのに対し、L3スイッチはハードウェアでそれを行っているからである。
L3スイッチにはスイッチチップと呼ばれるチップが組み込まれており、MACアドレスの付け替えやL3固有の処理であるIPパケットのルーティングなどを専用ハードウェアが行うことで高速処理を実現しているのである。なお、このような特定用途に特化したICチップは、一般的にASIC*と呼ばれている。
しかし、L3スイッチのすべての処理をASICが行っているわけではない。実はL3スイッチにもCPUが搭載されており、一部の処理はこのCPUによってソフトウェア処理が行われている。
そこで、次回はPCルータとL3スイッチのソフトウェア処理能力比較を、ping応答性能という面から比較してみよう。さらに、L3スイッチの性能限界を測定し、各L3スイッチの設計ポリシーを測定結果から考察していく。
Application Specific Integrated Circuit(エーシック)。特定目的のために作られたIC。
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