利用者の利便性を高めるきめ細かい配慮公共機関の複数窓口連携システム(1/2 ページ)

神奈川区役所では、窓口の一時的な混雑や、日常の窓口業務のスムーズな運用を目指し、各課横断チームにより、各窓口の発券システムを連携させた。

» 2008年04月01日 16時00分 公開
[ITmedia]

導入前の課題

窓口ごとに受付番号札が発行され、複数の窓口で利用する場合は、その都度順番を待つ必要があった。

利用者は必要な手続きを主に口頭で案内されていた。また混雑具合や待ち時間は職員が経験から予測していた。


導入後の効果

最初の窓口で2番目以降の窓口の受付番号を一括して登録できるようになった。また必要な手続きを合わせて印刷された用紙を発行して案内できるようになった。

将来はデータ分析によって混雑具合や待ち時間をより正確に予測できるようになる。


横断チームによる挑戦

 横浜市神奈川区は22万人の人口を擁する。もともと京浜工業地帯の工場群とそこで働く人たちの住宅地として発展してきたが、近年、工業地帯の跡地に大型のマンションが建設されるようになり、ベッドタウンとしても発展している。

 こうした背景もあり、他の地域からの転入者も年々増加しており、また区内にある大学生の転出入もあって、毎年2月から4月は区役所の関連窓口は混雑を極めていた。

 神奈川区役所では、こうした一時的な混雑や、日常の窓口業務のスムーズな運用を目指し、2006年度に業務改革運動の一環として設置された各課横断チームにより、各窓口の発券システムを連携させることで、利用者により分かりやすい案内と、待ち時間の低減を実現させた。

窓口の移動よりもコストの低い方法

 複数の窓口を利用するケースというのは、例えば、転入などで利用する登録係、年金や国民健康保険などの登録に利用する年金、保険係、そして児童手当などを利用するときに向かう福祉サービス関連の窓口だ。

 窓口連携システムを構築する前は、各窓口への案内は最初に訪れる窓口で案内はしていたが、利用者は各窓口でその都度順番待ちの番号札を発券機から受け取り、並ぶ必要があった。また、神奈川区役所の窓口は、同じフロアに並んでいるのではなく、別棟や別のフロアに移動しなくてはならなかった。

 「システムを構築する前に、同じフロアにこうした窓口を集めることはできないか、という検討はしました」と語るのは、戸籍課登録係の飯田智氏だ。

 「しかし、工事費などのコスト面で短期的な実現は難しいということが分かりました。ただし、だからといって区民へのサービス向上を諦めるわけにはいきません。何とか少しでも窓口のご利用の利便性を高めることはできないかと、改めて方法を検討していったのです」

神奈川区役所 戸籍課登録係 飯田智氏

 こうして、ひねり出された案が「各窓口の順番待ちの発券システムを連携させる」というものだった。最初に利用者が訪れた窓口で、今日回らなければならない窓口を案内し、同時に順番待ちの札も取る。そうすることで、利用者は1つひとつの窓口で次に行くべき窓口について説明を受ける必要はなくなる。

 「最初に利用した窓口の係の者が、利用者の方に代わって、必要な他の窓口の券を取ってくるというイメージですね」と飯田氏は語る。また、区政推進課の企画調整係、古瀬謙一氏は次のように語る。

 「窓口連携システムで各窓口の担当者が他の窓口の状況も把握できるようになると考えました。フロアが離れていても、状況が把握でき、なおかつ自分たちの窓口の今後の混雑具合が分かれば、対応も先手先手で進めることができます」

 こうして、作りたい仕組みの構想は出来上がった。しかし、それを具体化する方法論については、最も明解で低コストの手法をどうするのかという点で壁にぶつかった。

 「もともと設置されていた発券機のメーカーに連絡をしてみましたが、連携するシステムについては対応していないという返事。ITをうまく活用するにはどうすればいいのかという点では、すぐには方針が決まらなかったのです。そこで各方面に話をもちかけたところ、ITコーディネータの方を紹介されました」(飯田氏)

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