ロケーションフリーの仕組みを構築し、ビジネスに好循環を大手ITベンダーのコンタクトセンター(2/2 ページ)

» 2008年04月01日 16時00分 公開
[ITmedia]
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KPIの一元管理によってよりきめ細かな対応が可能に

 また、SAP製品との融合で、KPIの一元管理ができるようになった。これまでは各コンタクトセンターごとにKPI管理を実施し、集約するという作業を繰り返し、全体での共有作業も行われていたが、基本的に自動化が行われていたわけではないので、時間がどうしてもかかっていた。今回のシステムでは、KPIを管理する場所は1つになったので、共有するために各コンタクトセンターのデータを整理する作業そのものが不要になった。

対応履歴入力の改善とナレッジの効率活用

 「各オペレーターがお客様の相談内容を記入するフォームも改善され、記入作業も容易になっています。またこれまでも、ご相談内容に合わせて過去のナレッジをその場で検索するシステムはあったのですが、キーワード候補が自動的に見えるようになり、経験の浅いオペレーターでも素早く必要なナレッジにあたることができます」(寺師氏)

 また複雑な相談内容で、対応に時間がかかっているケースが発生した場合、これまでも全体を統括する責任者に知らせる仕組みはあった。しかし新システムでは、上司からそうした相談での会話内容を聞きに行ったり、オペレーターから上司に助けを求めるといった作業が容易になり、問題解決を正確、迅速に行えるようになった。

システム全体イメージ

 年間300万コールを超える電話での相談・問い合わせは、「知恵のかたまり」とも呼べるもので、さまざまな改善のヒントが隠されている。しかし、一方で共通の内容も多数かかってくる。これらは、同社のホームページ上でFAQとして公開しているという。共通化できる質問内容を迅速に絞り出し、FAQとして公開するまでの時間短縮が見込まれる。

 「PCは一家に1台から家族それぞれに1台の時代に入っています。多様な製品が市場に氾濫している中で、次も富士通製品にしよう、と考えていただくには、高いレベルのサービス体制が欠かせません。これまでもナレッジを蓄積し、製品、サービスの改善に結びつけてきましたが、そのためにかかる時間的コストは無視できないのです。簡単に手間を少なくして高いサービスを維持していくには、システム面の刷新はどうしても必要でした」と寺師氏は語る。

徹底した業務分析によって問題解決のスピードアップを

 今回のシステムでは、業務分析にも大きな威力を発揮する。呼び出しはあったが、オペレーターにつながる前に切れてしまう電話の割合を呼損率というのだが、この割合を時間ごとに割り出し、原因を逐次分析して効率向上に努めているという。

 回線の問題なのか、オペレーターのスキル不足かなど、原因としてはさまざまなものが考えられるが、こうした原因は固定化されるものではなく、ケースごとに変化するものだから、常に迅速に分析をかけていく必要がある。同社では時間ごとの呼損率から、各オペレーターの処理効率を割り出し、さらに問い合わせの種類、製品の種類などをドリルダウンして分析していき、客観的な結論を引き出している。まさにコールセンターの進化の一例ともいえよう。

導入効果を聞く――新システムは「業務の見える化」を実現させた

ITmedia 顧客対応といっても多様なものがあるでしょうね。

寺師 1994年以降の当社のPC製品は3000種類にも上ります。これらについてのお問い合わせに対応していくには、どうしても過去のナレッジの活用が欠かせません。今回のシステム刷新で、現場のナレッジ活用のスピードはかなり向上しています。

ITmedia このシステムは外販していく?

寺師 多くの業種で十分活用できるものだと自信を持っています。当社での活用によって、これからもどんどんノウハウは蓄積されていくと思いますので、細かいご要望にも応えていけると思います。

ITmedia 現場の反応はどうですか。

寺師 業務改善意欲が高まってますね。今回のシステムで、コールセンター業務の見える化がかなり進みました。見える化が進めば、思い切った権限委譲も可能になりますし、業務フローの改革もスピードアップできるでしょう。

ITmedia 今後の予定は?

寺師 サポート業務の向上は製品の品質向上にも直接つながっています。富士通製品のファンを増やし、買い替え時にも「次も富士通」と言っていただけるようにしていきたいですね。

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