21世紀以前のITを訪ねてIT Oasis(2/2 ページ)

» 2008年04月03日 06時00分 公開
[齋藤順一,ITmedia]
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95年に出現する「革命」の称号

 図書館へ行ってみよう。ITという書名のついた本を探してみる。

 1980年代にもInformation Technologyに関する本は出版されている。中身は、ITは将来こうなるといったSFの世界の話のようなものであった。

 1985年にはピーター・ドラッガーが「情報組織」を提唱したが、この当時は理念だけのものと思われていた。

 ITに多少近い概念では『Competitive Manufacturing Through Information Technology(邦題:競争優位のIT戦略)』(John Stark)という本が1990年に出版されている。

 当時はSIS(strategic information system、戦略情報システム)を超える次の何かという位置づけであった。

 1995年ころになると「IT革命」という言葉も登場している。このころのITの位置付けはインターネットを支えるハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク、システムなど供給側に関する話をするときに用いられる言葉であった。

 インターネットに関わる技術を指す言葉であったものが、携帯電話や家電の発達、バーコードや電子タグの出現、ATMの利用拡大など、コンピュータに直接結び付かない形で情報がやり取りされるようになったため、これを表現する言葉としてITが使われるようになったのである。

 つまり時代とともにITが意味するものは変遷しているのである。ITがバズワードであることに注意したい。

 バズワードは特定の意味だけを指すのではなく、時代によって変わっていく。実体があるようで、明確にはない。「情報技術」のITをイットと読んだ政治家を嗤った人に「ではITってどういう意味?」と聞くのは、はっきりいって意地悪である。バズワードを突然、定義せよといわれれば誰だって困ってしまう。

 確かに困ってしまうのだが、筆者は顧客に求められれば、ITという言葉の意味について、話し合う。それ自体実体のない言葉を媒介にして話していると、現実に顧客が必要とするITとは何か、ということにつきあたることができるからだ。

齋藤順一

さいとう・じゅんいち 未来計画代表。特定非営利活動法人ITC横浜副理事長。主に横浜・川崎の中小企業を対象にして経営戦略に則ったIT導入を支援している。大手メーカーで技術者として勤務したのち、ITコーディネータ、ビジネスと技術に関するアドバイザとして活躍中。上級システムアドミニストレーター、環境計量士、エネルギー管理士、第1種公害防止管理者(大気・水質)などの資格を持つ。


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