ヒトの出現が「IT」を生み出したIT Oasis(2/2 ページ)

» 2008年04月04日 09時39分 公開
[齋藤順一,ITmedia]
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ITとは意思決定を支援する仕組みである

 今まで見てきたように「IT」という言葉は時代とともに意味を変えてきている。

 それでは現在、「IT」はどういう意味と捉えればいいだろうか。

 技術計算はITとは呼ばない。データベースに関わる技術もそれだけではITと呼ばれることはない。自動制御やプロセス制御、NC加工、OA、FA、などもやはりITと呼ばれることはない。

 これらとITとにどのような差異があるのかというと、ITとは情報を伝達する技術であるが少なくとも片方の端には人がいるのである。ストレージのようにデータを保存する技術(=人には伝わらない)もあるという意見もあろうが、それは時間を遅延して情報を伝達する仕組みと考えればよい。

 情報処理学会の元会長である高橋秀俊先生の「『知る』ということの実体化。われわれが、あるものについて『知る』ということは、何かしらを得たこと、何かを頭の中に取り込んだことである。その『何かしら』をわれわれは情報と呼ぶのである」という定義のように、人の頭の中に知識の元として送り込まれるのが情報であり、情報の伝達に寄与しているのがITである。送り込まれた情報はどうなるかというと、人はそれを使って思考し、意思決定するのである。

 つまり、ITとは人間の意思決定を支援する仕組みと解するのが妥当だろう。

ITとICT

 世の中にはICT(Information and Communication Technology)という言い方もある。情報通信技術と訳される。

 ITとICTはどう違うのだろうか。

 米国ではITを使うが、欧州やアジアではICTが使われるという説もあるがどうだろうか。

 官庁ではITは経済産業省、ICTは総務省が使っている。余談だが、経産省はe-Japan、総務省はu-Japanを提唱している。

 ICTのC、コミュニケーションとは通信というより生物間の情報交換と解すべきである。インターネットや携帯電話などはコミュニケーションツールとして使われることが多い。そこでは情報の授受に加えて、会話やチャットなどを通じて意思の疎通をはかり、感情の表現、伝達などが行われる。

 最近は、二次元コードやICタグによりモノ自身が情報発信をすることができるようになった。モノとのコミュニケーションも出来るようになったのである。

 コンピュータは計算機室や事務所、家の中に限らず、屋外や乗り物の中などでも使えるようになり、究極的にはいつでも、どこでも、誰とでも、何とでも情報交換が出来るような状況になる。これをユビキタスと呼んでいるわけである。

 これもよく言われることだが、ITは目的ではなく手段である。何かの目的のためにITを活用するわけである。

 ITを導入したから効率があがるとか、売上が伸びるといったことはない。効率を上げたり、売上を伸ばしたりする選択肢の1つとしてITがあるということである。これを混同してITを目的化してはならない。

 ITを導入しただけでは業務は改善しない。導入しただけで効果を発揮するのはOAである。ITはよりよい意思決定を支援する仕組みであるので、ITの片端にあるインタフェースとも言うべき人間系の業務を、ITが導入されることを前提にして最適に変革しないと、系全体としての効率化や性能向上は見込めない。したがって業務改革、特にデータを収集する仕組みや意思決定の委譲が重要である。

齋藤順一

さいとう・じゅんいち 未来計画代表。NPO法人ITC横浜副理事長。ITコーディネータ、上級システムアドミニストレータ、環境計量士、エネルギー管理士他。東京、横浜、川崎の産業振興財団IT支援専門家。ITコーディネータとして多数の中小企業、自治体のIT投資プロジェクトを一貫して支援。支援企業からIT経営百選、IT経営力大賞認定企業輩出。


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