Googleのデータ保持期間問題、欧州委員会の意見はナンセンス?

検索データを18カ月保持するというGoogleのポリシーは「まだ長過ぎる」と欧州委員会は言うが、現状では厳し過ぎるのではないだろうか。

» 2008年04月09日 15時26分 公開
[Clint Boulton,eWEEK]
eWEEK

 欧州委員会が、ユーザーの検索データを18カ月間保持した後で匿名化するという米Googleのポリシーについて、この期間はまだ長過ぎるとの見解を表明した。当然のことながら、Googleのプライバシー担当幹部は反論している(関連記事参照)。

 この見解を含む欧州委員会の意見書については、このPDFファイルを参照のこと。難解極まりない文書ではあるが、リンクを張った。この意見書には、同委員会のプラトン哲学めいた議論が詰め込まれている。同委員会は、人生の意味を解き明かしているかのように検索エンジンの定義を論じている。

 検索エンジン市場に関する欧州委員会の記述の仕方は、国家が犯罪と処罰について理論的に説明しているような印象を受ける。大げさとしか言いようがない。

 欧州委員会は、プライバシーを生死にかかわる概念として認識している姿勢を懸命に訴えている。この意見書には、検索エンジンに関する同委員会ならではの特異な哲学が説明されている。

 全29ページの意見書の19ページ目を見てみよう。それがGoogleの反発を買っている個所だ。欧州委員会は、検索エンジンが検索データを処理して検索品質の向上を図る(そして、ユーザーがクリックしそうな広告を掲載して利益を上げる)必要性を考慮した上で、検索データは6カ月より長く保持されてはならないと考えている。

 しかも、企業がデータ保持を正当化できない場合には、保持期間は短縮されなければならないとされている。

 「個人データの保持と保持期間は、必ず(具体的で適切な論拠によって)正当化され、最小限に抑えられなければならない。公正な処理を確保するための透明性を高め、そうした保持を正当化する合目的性を保証するためだ」と欧州委員会は意見書で述べている。

 この目的に向けて、欧州委員会は「プライバシーを考慮した枠組み設計」を求めており、検索エンジン会社が個人データを6カ月より長く保持する場合には、「サービス上の厳密な必要性を包括的に証明しなければならない」としている。

 かなり厳しい締め付けだが、GoogleやYahoo!、Microsoftなどがユーザーの検索データについて現在設定している保持期間に本当に不安を感じている人は、欧州委員会の見解を歓迎したいと思うだろう。

 だが、わたしはナンセンスだと思う。オンライン広告を収益源としない優れた検索サービスを誰かが提供するまでは、われわれは、大手ベンダーがあまり邪魔にならない方法でデータを収集するのを容認しなければならないだろう。

 しかし、欧州委員会は容認するつもりはない。これについてわたしには意見がある(意見書に示された欧州委員会の意向に最も影響される大手検索エンジンは、米国企業であることに注意されたい)が、それはまた後日に触れたい。

 Googleのプライバシー担当法務責任者ピーター・フライシャー氏は、今回の意見書を受けて、検索品質の確保(と、それによる同社の収益向上)のためにデータを保持しているという、今やおなじみとも言える主張を展開している。

 「われわれは、データ保持要件が設定される際には、高品質な製品とサービス(的確な検索結果を返せるといったような)をユーザーに提供する必要性に加え、システムのセキュリティや完全性が考慮されなければならないと考えている」(フライシャー氏)

 この現在進行中の論争は、すぐには決着しないだろう。検索エンジンとは何か、何を行うのかについて考えをまとめた欧州委員会が、検索エンジンにどんな規制をかけようとするかが見ものだ。

 Googleなどの企業は、検索エンジンを国ごとに調整しなければならなくなるのだろうか。そうなれば大変な手間が掛かり、大きな負担になるだろう。

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