パッケージソフト全盛の最中、パッケージベンダーがSaaS型ソフトを提供するインセンティブはかなり働きにくい。新規SaaSベンダーはマルチテナント技術を駆使することで経済合理性を確保すると同時にユーザー企業に利便を提供することが可能である。しかし、企業規模別にビジネスモデルが固まりつつある段階で、パッケージベンダーがすぐにSaaSへ方向転換することは考えがたい。
ハードウェアについては、コモディティ化(製品選定の基準が「価格」のみに依存する状態になること)がすっかり進行したが、ソフトウェアはそうではない。ソフトウェアは分野にもよるが「機能差」が顕著に存在するため、ユーザー企業は「リーズナブルな価格」とともに「自社に適合したソフトウェアの機能」をいまだに強く欲しているのである。
よって、パッケージソフトであってもカスタマイズを施せば、競争戦略の一環として十分差別化を図ることができるのである。つまり、所有するだけで他社に競争優位となれるパッケージソフトはまだあり、それらが満足するほど普及しているとも思えない。
逆にパッケージソフト保有モデルでIT環境が整えられている企業に対して、次のようなSaaSへの移行メリットを訴求することは可能である。
これらの理由からコスト削減の可視化が実現することになるからだ。このようなユーザーニーズの拡大に伴いパッケージベンダーのビジネスモデル変革は必至となるだろう。
「手軽に導入できるSAP」を中堅企業に届ける
「SAPはハードルが高い」というイメージが払拭されつつある。長期的な費用を考慮すると、SAPは実は安価と考え、SAP Business All-in-Oneを導入する中堅企業が増えている。SAPが提供する実現機能確認シートに注目だ。一覧をチェックすれば購入前に費用の詳細が分かる。機能追加の際の費用も「見える化」できる。
なぜSAP ERPを導入するのか――女性衣料品通販ピーチ・ジョンの場合
ピーチ・ジョンは、女性向け下着などのカタログ通販で人気を集める。ピーチ・ジョンが、2009年の稼働を目指してSAP ERP導入プロジェクトに取り組んでいる。ネット販売店舗が急拡大し、継ぎ足すように対応してきたシステムをSAPでどう変えていくのか。2007年11月のワコールの完全子会社化に伴い内部統制強化も課題となっている。
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