PC電源のノイズ耐性を測れ【前編】計る測る量るスペック調査隊(2/3 ページ)

» 2008年04月16日 03時00分 公開
[ITmedia]

電源の仕組み

 まずは実験を行う前に、PCやサーバの電源について、その原理を簡単に説明しよう。

 日本国内ではコンセントから供給される電力は電圧100V前後の交流電流だ。一方で、PCやサーバなどを構成するLSIや電子回路は3.3〜12Vの直流電流を受けて動作する。そのため、電源によってコンセントから供給される高圧の交流電流を、低圧の直流電流に変換するわけだ。言い換えれば、電源とは「電圧の高い交流電流」を「電圧の低い直流電流」に変換する装置なのである。

 この「電圧の変換」と「交流→直流」の変換を実現する方式としては、3端子レギュレータと呼ばれる素子を用いて出力電圧を一定に保つ「シリーズ方式」と、高速でスイッチのオン/オフを繰り返すことで電圧を制御する「スイッチング方式」の2種類が存在する。ただし、現在では効率が高く小型化が可能なスイッチング方式が主流であり、PC向けの一般的な電源はほぼすべてスイッチング方式を採用したスイッチング電源である。

スイッチング電源の構成要素

 図1はスイッチング電源の分解写真である。スイッチング電源はコンデンサ、ダイオード、トランジスタ、トランス、コイルなどで構成されており、図2のような手順で高圧の交流電流を低圧の直流電流に変換する。

図1 図1 スイッチング電源の内部

1.直流変換

 ダイオードやコンデンサなどで構成される整流・平滑化回路によって、入力された高圧の交流電流を高圧の直流電流に変換する。

2.高周波変換

 高速にスイッチオン/オフを繰り返して、高圧の直流電流を高圧の高周波に変換する。この回路はスイッチング回路と呼ばれ、トランジスタやICなどで構成されている。また、出力電圧を監視し、電圧が低下したらスイッチオンの間隔を長く、逆に上昇したら短くすることで出力電圧を一定に保つ。

3.絶縁

 トランスを経由して入力側と出力側を絶縁する。トランスには高周波のみを通過させる働きがあり、電気的に入力と出力を分離することができる。

4.降圧・直流変換

 高周波をダイオードやコンデンサなどで再度整流・平滑化し、直流に変換する。

 なお、スイッチング方式はシリーズ方式と比べ効率が良く、発熱も少ないといわれているものの、高圧電流を扱うスイッチング回路ではある程度熱が発生する。そのため、スイッチング回路で利用される素子にはヒートシンクが装着されている。

図2 図2 スイッチング電源の動作手順

スイッチング電源の問題点

 スイッチング電源はスイッチングを行って高周波を作り電圧を制御するという仕組み上、高周波ノイズが出力に含まれるという問題がある。そのため、ノイズを嫌うオーディオ機器や測定機器にスイッチング電源を使用する例は少ない。またCPUなど、特に安定した電圧供給が必要な素子に対しては、電源が供給される側(マザーボードなど)で再度整流を行う必要がある。PCのマザーボード上に配置されている大型コンデンサ*の多くは、このような整流回路で使用されているものだ。

電源のスペック表

 スイッチング回路にはトランジスタなどの半導体素子が使われており、当然回路が制御可能な電力には限界がある。この限界値は通常、図3のように電源のスペック表に記載されている。これは「300W電源」などと呼ばれる電源のもので、その名のとおり最大で300Wまでの出力が可能である。また、入力としては115Vもしくは230V前後、50Hzまたは60Hzの交流電流を使用し、115V時に最大7A、230V時に最大3.5Aの電流を消費する。一方、出力としては+12V、+5V、+3.3V、.12V、+5VSB、.5Vを持ち、例えば+12Vは12A、+5Vは20Aまでの電流を出力できる。なお、+5VSBはスタンバイ電源と呼ばれるもので、PCの電源がオフの状態でも常にマザーボードに供給される電源である*。また、この電源での+12Vと+5Vは合計で150Wまでしか出力できない。例えば、+12Vを最大出力である12A(144W)まで使用する場合、+5V端子からは6W、つまり1.2Aまでしか出力できない。

図3 図3 電源のスペック表例

 さらに写真2のように、電源によっては最大瞬間出力(Peak Power)などという記述があるものもある。これは、短い間(一般には数秒から数十秒程度)ならばこの値まで出力が可能、ということを示している。

写真2 写真2 最大出力が表記されている電源の例

このページで出てきた専門用語

マザーボード上に配置されている大型のコンデンサ

電解コンデンサは経年劣化によるトラブルの原因となりやすいため、できるだけ電解コンデンサの使用を少なくする試みが行われている。そのため、低消費電力CPU用のマザーボードではコンデンサを使用していないものもある。

PCの電源がオフの状態でも常に供給される電源である

揮発性メモリに記録されたデータの保持などに使用されることが多い。


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