「内部統制報告制度に関する11の誤解」の使える部分を探してみたITIL Managerの視点から(3/4 ページ)

» 2008年04月17日 08時00分 公開
[谷誠之,ITmedia]

8.非上場の取引先も内部統制の整備が必要か

[誤解] 上場会社と取引すると、非上場会社でも、内部統制を整備・評価しなければならない。

[実際] 上場会社と取引があることをもって、内部統制の整備等を求められることはない。

(具体例)

・取引先(委託業務の委託先を除く。)

上場会社の仕入先や得意先などの取引先(非上場会社)には、内部統制の整備・評価は求めていない(これまでどおりの納品書、請求書等の作成等で可)。

・上場会社の業務の委託先

委託業務の委託先であっても、重要な業務(プロセス)となっていない場合には、評価の対象とはならない。


 この説明では、消費税と同じような問題が起きてしまうのではないかと感じる。

 現状、消費税は「年間売上が1000万円以下の事業者は消費税を納めなくてもよい」ことになっている。しかし実際には、売り上げが1000万円以下の事業者であっても、商品を仕入れたり必要な設備を整えたりする際に消費税がかかるため、顧客から消費税を徴収せざるを得ないのが現実である。

 ここには「上場会社の仕入先や取引先には、内部統制の整備・評価は求めていない」と書かれているものの、上場会社にとっては、その仕入先や取引先から入手した設備そのものが内部統制の対象になる可能性があるのだ。特にIT調達に関しては、調達したITシステムが適正である、ということを上場会社が証明しなければならない。上場企業が社内の内部統制書類を整備するために、非上場企業である仕入先や取引企業に対しても、詳細な情報を求めるのは間違いない。企業規模や上場/非上場を問わず、内部統制の影響を受けてしまうのは必至であろう。

9.プロジェクトチーム等がないと問題か

[誤解] 内部統制報告制度に対応するためのプロジェクトチームがない場合や専門の担当者がいない場合は、問題(重要な欠陥)である。

[実際] 内部統制報告制度への対応については、既設の部署等を活用で可。必ずしもプロジェクトチームや専門の担当者を置くことは不要。

(具体例)

・既設の部署の活用

経理部や内部監査部など既設の部署を活用。

・企業外部の専門家の利用

内部統制の評価作業等の一部を社外の専門家を利用して実施。


 プロジェクトチームは不要だろうが、「既設の部署」を活用するにしても、企業外部の専門家を利用するにしても、どこかに負担がかかるのは間違いない。少なくとも内部統制は、本業の片手間にできるような業務ではないからだ。専門の担当者は必須、と考えておいたほうがいいだろう。付け加えると、その担当者にはマネジャーレベルの権限を与えておかないと、内部統制が形骸化する可能性がある。そう考えると、内部統制の評価作業を社外にアウトソーシングすることは、権限付与の観点からも、避けるべきであろう。

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