第4のパラダイムシフトの起点――Salesforce for Google AppsWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2008年04月21日 02時41分 公開
[松岡功ITmedia]
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クラウドコンピューティング時代の到来

 では、なぜこの新サービスがITシステムの利用形態の変化を象徴しているのか。キーワードは「クラウドコンピューティング」である。昨年来、使われ始めたこの新語は、ITシステムはネットワークという「雲=クラウド」の中に隠蔽してブラックボックス化し、ユーザーはクラウドから接続先さえ意識することなくサービスを受けるという新たなパラダイムを意味する。

 ネットワーク中心という面では「ネットワークコンピューティング」、無数のデバイスがネットワークに遍在する面では「ユビキタスコンピューティング」、サービスとして提供する面では「ユーティリティコンピューティング」や「SaaS」といった言葉があるが、クラウドコンピューティングはそれらを総合した上位概念との見方もある。

 ITシステムの利用形態の変遷でいうと、「メインフレーム全盛期の集中管理」、「オープンなクライアントサーバシステムによる分散処理」、「インターネットに代表されるネットワーク中心の新しい集中管理」に続いて、クラウドコンピューティングは第4のパラダイムと位置付けられている。したがって、これからはこの第4のパラダイムが主戦場となってくる。

 今回のGoogleとSalesforce.comの協業拡大の狙いは、この第4のパラダイムで先行し、いち早く一大勢力を形成することにある。そのため、Salesforce for Google Appsはこのほど提供し始めたサービス内容にとどまらず、Salesforce.comが展開しているSaaSの仕組みそのものを他社のアプリケーションでも利用できるようにした「Force.comプラットフォーム」およびGoogleのオープンAPIを活用することにより、開発者やパートナー企業のコミュニティへ従来よりもさらに幅広い開発環境を提供している。

 両社はSalesforce for Google Appsを、「あらゆる規模の企業がクラウドコンピューティングで成功を収めることを可能にするソリューション」と銘打っている。それは冒頭で述べた通り、ITシステムが「所有」するものから「利用」するものへと完全にシフトすることを意味する。Salesforce for Google Appsがどれほどユーザーの支持を得ることができるかどうか注目されるが、ITシステムの利用形態における新たなパラダイムシフトの到来を明示したことだけは間違いなさそうだ。

松岡 功

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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