原因不明のロスが頻発――SAP R/3で最適条件をあぶり出せ事例 製薬工場の新原価管理手法(1/2 ページ)

田辺製薬吉城工場は、基幹システムにSAP R/3を導入したことにより、環境コスト分析を開始。原価低減活動と環境負荷削減を同時に実現する環境経営を推し進めている。

» 2008年04月23日 17時03分 公開
[ITmedia]

効果測定

ロス金額を600万円削減、純利益も2倍以上に


導入前の課題

原因不明のロスにより、廃棄総額は7300万円、製造費用総額の1.9%を占めていた。


導入後の効果

ERPと連動したMFCAマネジメントシステムを導入することで、ロスの低減とともに、廃棄物やエネルギーの大幅な削減も実現。


 田辺製薬吉城工場は、1964年の創業以来、旧田辺製薬(現在は田辺三菱製薬)のグループ会社として、少量多品目の医薬品における小分け包装業務を担ってきた。同社が取り扱う医薬品の包装形態の内訳は、錠剤、顆粒剤、散在、カプセル剤など109品目におよび、取り扱い錠数は年間7億錠前後にも達する。生産品目の切り替えにかかる型替/洗浄回数も多く、年間で400〜450回にも及ぶという。そのため、迅速なサイズチェンジが可能でGMP(医薬品の製造管理および品質管理規則)に対応した設備を導入し設備担当者を養成することで生産技術の向上に努めている。

R/3とMFCAでロスの詳細分析が可能に

 2002年、基幹システムにSAP R/3を導入したことにより、環境コスト分析を開始。翌03年度からは、SAP R/3と連携した「マテリアルフローコスト会計」(MFCA)システムを導入し、これらを有効活用することで原価低減活動と環境負荷削減を同時に実現する環境経営を推し進めている。

田辺製薬吉城工場 総務課長 船坂孝浩氏

 MFCAとは、製造工程における物の流れをコストの視点から分析し、廃棄物の経済的な価値を可視化する環境管理会計の手法のこと。廃棄物も「負の製品」としてとらえることで、抜本的なコスト削減と環境影響への削減の両立が可能となる。

 「従来から廃棄物ゼロエミッションなど、環境負荷削減に努めてきたと同時に、今後広く包装業務の受託を進めていくために、企業の付加価値を高める手法としてMFCA導入に取り組んできました」と語るのは、同社の総務課長を務める船坂孝浩氏だ。

 MFCAシステムを導入したことで、全品目、全容量で年間約2500に及ぶ製造指図書ごとのマテリアルロス(原材料や洗浄剤等の補助材料のロス)、システムロス(労務費や加工費などのロス)の詳細な分析が自動で可能になったという。

原因不明のロスが頻発、製造プロセスを再検討

 そんな中、同社は04年から顆粒剤を0.5〜1グラム処方単位に包装する顆粒分包機を導入し生産を本格化。しかし、その製造プロセスを調査した結果、05年度のマテリアルロス/システムロスを合わせたロス金額の総額は7300万円となり、製造費用総額の1.9%に及ぶことが判明した。中でも、顆粒分包ラインでのロスは2200万円となり、ロス金額全体の30%に達し、このロス削減が緊急の課題となった。

 ロスの分析と絞りこみを行ったところ、包装材料を環境に負荷を与えない素材に変更したことによる製造機の調整難に加え、1つの機械に装てんする品目が多く、型替えのための調整時に多くの包材ロスが発生することが判明した。

 一方、顆粒分包ラインでは、原因不明のかみ込み(分包シートのシール部分に顆粒が閉じ込められる現象)が頻発。そのかみ込み量が多い場合はマテリアルロスとして廃棄せざるを得ない。そこで同社は、ロス比率の大きい顆粒分包ラインを重点的に製造プロセスの再検討を進めることとした。

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