SGI“らしさ”の復権、「DesignCentral Imager」がデザイナーに与える衝撃

かつてのSGI“らしさ”を感じる製品が日本SGIからリリースされた。「デザイナーのわがままをとことん実現した」というデザインビュワー「DesignCentral Imager」がプロダクトデザインの生産性を向上させる。

» 2008年04月23日 17時27分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 OnyxやIndigo2、Indy――かつて存在したこれらのマシンを利用した経験のある方なら、今でもときおり「SGIのマシンはよかった」と回顧することもあるのではないだろうか。当時、数多くのデベロッパーやデザイナーがSGIのハードウェアはクールだと評していたものだ。

 こうした古き良き時代を知っている方からすると、ハードウェアビジネスからソリューションビジネスへと軸足を移した現在の日本SGIに物足りなさを感じていたかもしれない。「もう日本SGIからはクールな製品は登場しないのか」――そんな思いを打ち破るかのように、4月23日、いかにも日本SGI“らしい”製品が発表された。

 日本SGIが4月23日に発表したのは、デザイナー向けのデザインビュワー「DesignCentral Imager」。5月1日から販売開始される同製品は、デザイン決定会議に用いられる既存のデザインビュワーの前段階として、デザイナー自身がモデルの確認・修正をタイムリーに実行することを可能にするもの。まずは自動車業界のデザイナーをメインターゲットに据えている。

Get Macromedia FLASH PLAYER DesignCentral Imager。HDRIを用いて実際の利用シーンを想定しながらデザインが可能に(動画提供:日本SGI)

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 現在、こうしたデザインレビューの現場で多く用いられているソフトウェアとして、Opticore社(2007年6月にAutodeskが買収)の「Opticore Realizer」が挙げられる。数百万円の価格となるOpticore RealizerがすべてのデザイナーのPCに導入されているケースは非常にまれで、多くの場合、数台のPCに導入されるにとどまっている。さらに、専用のスタッフを介しての利用となることが多く、概してデザイナー自身がデザイン初期の段階から、レビューを手軽に行える環境があるとは言い難い。

 今回発表した製品は、「デザイナーのわがままをとことん実現した」(同社高度ビジュアル・メディア開発本部本部長の橋本昌嗣氏)と同社が自信を持って送り出しただけあって、2クリックで目的を達成できるというユーザーインタフェースをはじめ、GUIには日本SGIのこだわりが随所にみられる。デザイナーは直感的な操作でAliasStudioのデータ構造を読み込み、評価用マテリアル(クレイ、シルバー、ゼブラ、グリッド)をクリックで切り替えながらモデリングデータの形状検討などが行える。

Get Macromedia FLASH PLAYER DesignCentral Imager。評価用マテリアルの適用も簡単にできるようになっている(動画提供:日本SGI)

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 また、明暗分解能が高い画像データ「HDRI(High Dynamic Range Images)」を背景として用いることで、さまざまな環境下でのリアルタイムライティングの検証も可能となっている(HDRIはデフォルトで7種搭載される)。これまで、実写に近いイメージにするためにモデリングデータと背景画像とのキャリブレーションには相当の時間を必要としていたが、そうした作業からも開放されることになる。

 かつて国内の自動車メーカーでカーデザインなどを担当した後、日本SGIへと移った平井直哉氏は、今回の製品について、価格面でも現実を見据えたものになっていると話す。

 価格形態としてはライセンスモデルとレンタルモデルの2種類が用意され、ライセンスモデルが75万円(別途年間保守料15万円)、レンタルモデルが19万8000円となっている。今回、日本SGIがレンタルモデルを(比較的社内りん議が下りやすい)20万円以下に抑えたのは、多くのデザイナーが手軽に利用できるようにとの狙いからだ。また、日本SGIのAsterism、サンのSun Ultra 24といったワークステーションとのバンドル販売も検討中であるという。なお、動作環境としては、現時点でWindows XPのみとしている。これは、多くのCADソフトウェアでWindows XPのみ動作が保証されている現状を踏まえてのことだ。インタフェースが英語なのも「CADソフトウェアの多くが英語版で用いられることが多いという現状に併せたという点が大きいが、この製品を国内だけで閉じるつもりがないという意図も含まれている」(橋本氏)という。

 最初のターゲットを自動車業界のデザイナーに据えた同製品だが、読み込む3Dオブジェクトデータは、必ずしも車である必要はないはずで、環境に合ったレイトレーシングなどの要素が整い次第、家電/電機製品、家具といった分野や、建築業界などへ順次展開していきたいとしている。さらに、デザイン検討会用にもパラメータの細かなチューニングが行えるモデルを用意することで、デザインのプロセスすべてをカバーする姿勢をみせた。

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