環境大国の試金石となるか、Imagine Cup 2008日本代表の壮大な野望(1/2 ページ)

Imagine Cup 2008の日本代表に選ばれたのは、世界の消費電力を削減せんとするグローバル消費電力システム「ECOGRID」を発表したNISLabチームだった。4人の戦いはここから始まる。

» 2008年04月30日 03時00分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 「優勝は……、NISLabの皆さんです」――会場を埋め尽くした観客がかたずをのんで見守る中、今回の司会を務めたマイクロソフトの田中達彦氏(アカデミック情報教育推進部マネジャー)は、同志社大学大学院と京都大学大学院の学生で構成された混合チーム(チームメンバーは松下知明さん、加藤宏樹さん、清水誠さん、中島申詞さんの4人)の名を口にした。4月27日に名古屋市のコンピュータ学園HALで開催された「The Student Day 2008」でのことだ。

 Microsoftが全世界の学生を対象に毎年開催している学生IT技術コンテスト「Imagine Cup」。今年で6年目を迎える同コンテストは7月にフランスのパリで開催される。毎年異なるテーマが与えられており、今回のテーマは「テクノロジーの活用における環境保護の実現」だ。そのソフトウエアデザイン部門に出場する日本代表を選抜するイベントも兼ねたThe Student Dayでは、上述したNISLabのほか、「IAMAS」「Team EMET」の3チームがプレゼンテーションを行った。日本を含め、環境先進国は裏返せば環境破壊の先駆者でもある。そんな日本の学生はこのテーマに対してどういったソリューションを考えたのか。

エコロジーをグリッドで――ECOGRID

 今回、環境という広いテーマ、かつグローバルで通じるソリューションを考える苦労を思うと、今回日本代表の座を争った3チームは、いずれも独自の視点をうまく実装したアイデアを披露したといってよいだろう。加えて、今年から、国内のITベンチャー企業がメンターとして指導・支援を行う「学生メンタープログラム」が開始されたことで、各チームとも国内大会としてはレベルの高いプレゼンテーションを披露した。

 NISLabが発表したのは、グローバル消費電力システム「ECOGRID」。エコロジーの「ECO」とグリッドコンピューティングの「GRID」を合わせた造語だ。

NISLabチームとECOGRID。ECOGRIDはクリックで別画像に

 ECOGRIDでは、PLCなどのハードウェアを用いて家電機器を自動制御することで消費電力の削減を狙う。さらに、そのモニタリングとソーシャルネットワーク化をグローバルで行おうとするものだ。自動制御を行う基準には「環境基準」「ユーザー基準」の2つを、さらに家電機器ごとに優先順位を設定することで、状況に応じて快適性を損なわない範囲で家電機器の消費電力の削減を図ろうとしている。

 ソーシャルネットワーク化の部分は、Virtual Earthを利用してユーザーを地図上にマッピングして可視化するところまでは作り込まれていた。この先、過度な電力消費を行っているユーザーに対して省電力を呼びかけるようなコミュニケーション機能の実装も予定しているという。

部分部分で光るものがあったほかのチーム

 今回2位となったIAMASは、循環型社会を構築する「Reduce(削減)」「Reuse(再使用)」「Recycle(再利用)」、いわゆる「3R」に着目。企業、自治体、ユーザーからそれぞれ商品情報、ごみ回収スケジュールや分別区分などの情報、ユーザーが不要となった品物などの情報(これをほかのユーザーと取り引きすることで消費行動抑制を図る)をまとめるポータル「Reco」を作ることで、ごみ問題を解決していこうとするものだった。

IAMASチームとReco。すぐに実用可能という意味ではほかのシステムより完成度は高かった

 また、昨年に引き続いての参加を果たしたTeam EMETは、地図情報に時間軸を付与したシステム「moQmo」を発表した。Virtual Earth上にレイヤーを幾つか設ける形で、ユーザーのコメントや、ごみの集積場におけるごみの量などを重ね合わせ、かつそれを時間軸でみることができるというものだった。「サッカーでもフィールドの選手より、上からみているサポーターの方が全体をよく見渡せる。サポーター視点からのエコ情報を地図上にレイヤー情報として持たせた」と渡邊徹志氏は話す。そのアイデアが必ずしも環境という今回のテーマに合致していなかったのは惜しいところだが、アイデアはニコニコ動画などにみられる擬似同期感覚を現実の世界に適用しようとするもので、非常に可能性を感じさせるものだった。

2年連続の出場となったTeam EMETとmoQmo。アイデアは可能性を感じさせる
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