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» 2008年05月01日 20時00分 UPDATE

日本のソフトウェア産業は“質と量”で国際化に対処、IPA新理事長が会見

IPA理事長に就任した西垣氏は、セキュリティ、ソフトウェアエンジニアリング、人材育成、オープンソースを重点分野に掲げる。

[國谷武史,ITmedia]

 「ソフトウェア産業の振興にはリテラシー向上と人材発掘が欠かせない」――4月に情報処理推進機構(IPA)の新理事長に就任した西垣浩司氏は5月1日、記者会見を開き、IPAの第二期中期計画と今後の運営方針を説明した。

mrnishigaki.jpg IPA新理事長の西垣氏

 NECで長年コンピュータビジネスに携わり、社長を務めた西垣氏は、「国内とオフショアを比べてみると、日本のIT産業が国際競争で生き残るにはユーザーを含めた国民全体のITリテラシーの底上げと優秀な人材を地道に発掘していくしかないと考えている」と述べた。IPAの新中期計画では、情報システムの安全・信頼の向上や国際競争力の強化に力点を置いた施策を推進する方針だという。

 IPAが新中期計画で重点項目に掲げるのが、「セキュリティ」「ソフトウェアエンジニアリング」「人材育成」「オープンソース」の4分野。この中で西垣氏は、特にソフトウェアエンジニアリングと人材育成を重視している。

 ソフトウェアエンジニアリングでは、IPAのソフトウェアエンジニアリングセンターを中核に、国内で展開されるさまざまなプロジェクト事例を収集・分析し、開発スキルの標準化と全体的な底上げを図っていく考えを明らかにした。情報システムを重要インフラの1つに位置付け、信頼性や安全性の向上を目指すという。

 「長年現場を見てきた経験から、日本は欧米に比べてSLAの意識が十分に浸透していないと痛感している。エンジニアとユーザーがシステムの信頼性、安全性を理解する環境作りを進めたい」(西垣氏)

 特に開発ニーズが急拡大する組み込み分野では、IPAが取りまとめた開発スキル標準の普及を促進したい考え。「自動車を例にみても、制御系だけで相当数の組み込みソフトウェアが利用されている。ユーザーの生命にもかかわる分野であり、ノウハウの集積と分析、公開を推進する」(西垣氏)

 また、組み込み分野でも採用の広がるオープンソースソフトウェアの利用環境の整備にも注力するという。「Linuxが選択肢の1つとして当たり前の存在になったように、オープンソースソフトウェアは人類共通の財産と利用されるようにしていかなければならない」と同氏。家電メーカーなどが難色を示すGPL(GNU General Public License)のバージョン3について、「(情報開示性など)組み込み業界の慣習と相反する要素もあるが、きちんと向かい合っていかなければならないと思う」と述べた。

 西垣氏は、ユーザー側におけるITリテラシーの向上も国内のIT産業にとって早急な課題だと指摘。このため、ITの基本的理解の普及促進を図ることを目的に「ITパスポート試験」を創設する考えを明らかにした。同試験は、情報処理技術者試験の入門レベルに位置付けられ、情報システムの利用で理解しておくべき内容を試験するという。

 「システムにトラブルが起きると“きちんとテストしたのか”と非難する人は多い。利用者の立場にいる人にも情報システムの性質を正しく理解してもらうことが必要だ」と述べ、ユーザーサイドに立った認定試験を導入することで国民全体のITリテラシー向上を図っていきたいとしている。

 情報セキュリティ分野では、ウイルスやスパム、Webシステムなどを狙った攻撃など、さまざまな脅威に対し、米国標準技術研究所(NIST)との連携といった国際的な枠組みで対応強化を図る。IPAなどが公開する脅威情報データベースの英語版での提供、認証技術の開発などを進めていく方針だ。

 西垣氏は、「これらの取り組みによって、日本のソフトウェア産業を地理的条件や制度的条件といったさまざま障害に左右されない強固な環境にしていきたい」と意気込みを話した。

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