Yahoo!買収を断念――Microsoftの真意とはWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2008年05月07日 09時39分 公開
[松岡功ITmedia]
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今度は友好的な統合の模索を

 MSサイドの話ばかりしてきたが、今回の一件では、やはりYahoo!サイドのMSに対する強い不信感が大きな壁になっていたといわざるをえない。ジェリー・ヤンCEOをはじめYahoo!の従業員には、覇権主義的なイメージが強いMSに対する反発心が根強いとも言われる。ヤンCEOはMSによる買収断念の発表を受けて、「買収提案は過去のものとなり、すべてのエネルギーを重要な改革に集中できる」と経営の独立を勝ち取った喜びを表明したが、Yahoo!を取り巻く環境がこれから一層厳しくなることは誰の目にも明らかだ。

Yahoo!のジェリー・ヤンCEO

 では、今後MSとYahoo!がこれまでの経緯を仕切り直して手を結ぶとしたら、どのような展開が考えられるだろうか。先に触れたように、Yahoo!の株価が急落して、結局はMSがあらためて買収を成立させるかもしれない。しかし、その時はYahoo!も今より弱体化しているだろう。それではMSにとっても意味がない。

 そう考えると、手段は友好的な統合が望ましい。その鍵を握るのは、MSとYahoo!が単にGoogleに対抗するというより、Googleと対抗できる一大勢力をつくることが世界のネット市場の健全な発展のために必要だという強い思いを共有できるかどうかにかかっているのではないだろうか。

 当たり前のことを言うようだが、ネットがこれから社会にもたらすインパクトの大きさを考えると、ネット企業にはこれまで以上にそうした明確な理念が求められる。市場の活性化や成長・成熟には、拮抗する勢力による健全で公明正大な競争が存在することが望ましい。そんな大局的な観点に立たないと、もはやネット市場でGoogleの対抗勢力を生み出すのは難しい。その意味でネット市場は今、不健全な方向へ進みつつあると筆者は考える。

 MSとYahoo!に言いたい。もし次に手を結ぶ状況になったならば、「両社が力を合わせれば、こんな魅力のあるサービスが実現できる」という話を早い段階で打ち出してほしい。両社ならではの魅力あるビジョンを示してほしい。両社の不信感を払拭するには、理念とビジョンを共有することから始めるしかない。多少時間がかかってもだ。カリスマ経営者であるバルマーCEOとヤンCEOなら、高い次元でそんな話ができるのではないか。そう期待したい。

松岡 功

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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