新藤愛大――欲望という幻想を現実に変えるActionScripterNew Generation Chronicle(6/7 ページ)

» 2008年05月12日 00時00分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

プラットフォームとしてのFlashを見つめ直してほしい

―― ActionScript3.0で気に入っている点、気に入らない点を挙げてみてください。

  • 気に入っている点

書きやすいこと

型安全であること

DisplayObjectツリーが導入されたこと

ByteArrayが存在すること

  • 気に入らない点

非同期処理が複雑になってしまうこと

ジェネリクスがないこと

リフレクションが弱いこと

―― FlexSDKなどがオープンソースになるなど、ActionScripterが増える素地は固まってきたようですが、今後、どんなことがトリガとなってActionScripterが増える(もしくは減る)と思いますか?

FlexSDKがオープンソースになったことはActionScripterの増加とはあまり関係ない気がしますが……、ActionScript3がより厳格なオブジェクト指向言語になったこと、コンパイラが無料で手に入るようになったことで、他言語(特にJava)からActionScriptに流れてきている人は多いと思います

 最近でも、ActionScript技術系のブログはよく見かけるようになりました。プログラマー的なActionScripterが増えたということですね。逆に、Flashは価格が高くなったり、Flash自体がビジネスユースな方向に向かっていっていたりと、どんどんハードルが高くなっているので、Flashから入る方、FLASHer的なActionScripterは減ってきているような気がします。

―― ActionScriptの将来を現実的な観点から想像してみてください

直近で言えば、ECMAScript4の仕様が策定されていて、ほぼ固まったようなので、そう遠くないうちにActionScriptも4になるでしょう。その前に、ActionScript3.1が導入されるという話も聞いたことがありますが、個人的には、ActionScript3に追加で欲しいのはジェネリクスぐらいなので、いろいろと複雑な言語仕様が追加されているECMAScript4(それはそれで面白いのですが)には少し抵抗があります。他人のコードが読みづらくなり、余計初心者が入りにくくなるのでは、という危惧もあります。

―― Adobe AIRとSilverlight、時代はどちらにほほえむと予想しますか?

AIRはデスクトップ用、Silverlightはブラウザ用なのでちょっと比べにくいですが……、Silverlightは触ったら負けかなと思っているのでAIRにかんしていうと、イマイチ盛り上がりに欠けている感があります。日本語が入力できない問題があったり、日本語版が正式リリースされていないということもあるのですが。

 それにしても、AIRはせっかくデスクトップアプリが作れるのに、ちょっと箱庭感が強すぎるのです。すごくざっくり言ってしまうと、Flashにウインドウ操作とファイルシステム操作が加わったぐらいで、AIRのAPIで用意されていない限りそれ以外のOSの機能は呼び出せませんし、セキュリティ制限もキツめです。もう少し緩くしてもらえると面白いアプリケーションも今より出てくるんじゃないかなぁ、と思っているのですが。

―― ActionScripterとしてアドビに期待することは?

ActionScripterとして、というかFLASHerとして、なのですが、大きく分けて2つあります。1つ目が「Flashのハードルを下げること」。2つ目が「Webプラットフォームとして強化させること」です。利益だけを追い求めるビジネスは虚しいビジネスでしかありません。

 前者は、ハードルが高くなる一方のFlashのハードルを下げる(価格を下げる、過去のバージョンを無料配布するなど)ことで、より多くの個性あふれる人たちにFlashで作品作りをしてもらいたい、という願いからです。昔はFlashを作っていればヒーローになれる時代がありましたが、今はニコニコ動画などに高画質の動画を上げたりする方がヒーローですからね。ハードルを下げることで多くの才能が流入すれば、もう一度Flashでヒーローになれる時代がくるのではないでしょうか。

 後者は、WebサイトでのFlash利用が嫌われる現状を受け、その多くがWebブラウザとしての基本機能を満たしていないことが理由であるため、そこを強化して改善し、ユーザービリティをもっと上げて、よいFlashコンテンツを増やしたい、という願いからです。正直なところ、以前Adobeの発表で次期Flashでは3D機能が搭載される、みたいな話があり、確かにそれはFlashを売るという点ではインパクトがあってよいのですが、実際の現場で求められているのはもう少し低レベルなところ(デープリンクであったり、きちんとしたマウスのサポートであったり)の改善であって、ベースというかプラットフォームとしてのFlashを見つめ直してほしいとは思います。あと、そろそろ描画のパフォーマンスも改善してほしいですね。

―― FLASHerの飛躍の鍵があるとすれば、どういったものを挙げますか?

「Flashで結婚しました」とか「Flashでベンツを買いました」とか「Flashのおかげで身長が伸びました」的な、FLASHerがヒーローになれるような何かが必要じゃないでしょうか。実際にそういう方はまだ現れていないので、FLASHer一同頑張っています。

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