今後ビジネスネットワークを実現する、1)洞察、2)柔軟性、3)効率性、の3つの要素を強化し、クローズドループでビジネスパフォーマンスの最適化、ビジネスネットワーク企業への転身を実現する。
3つの要素を掘り下げてみていくと、1)の洞察は、ビジネスネットワークの業績を最適化するもの。今年はじめに公開買い付けにより取得したBIベンダー、仏Business Objectsが大きな役割を果たす。ユーザーインタフェースの強化により、業務担当者はITに頼ることなく高度な分析が可能となった。より的確な意思決定につなげられるという。
基調講演では、ビジネスユーザーが「Crystal Reports」「Web Intelligence」など、Business Objectsの分析機能やダッシュボード技術を使って、深いビジネス情報を視覚化し、意思決定につなげるというデモも披露した。
2)の柔軟性では、要件に合わせビジネスユーザーとIT担当者がともにモデルを設計し、シュミレーションし、実行することを目指す。ここでは、米国のSapphireで「SAP NetWeaver Business Process Management」を発表している。デモでは、ビジネス分析担当者がサービスレポジトリから選択しながらモデルを作成、テスト実行してみせた。3)の効率性では、Business Suiteで提供している24の業界でのベストプラクティス、プロセスオートメーションなどが実現する。
カガーマン氏は、ビジネスネットワークにおいて重要となるのは、「ビジネスネットワークの業績を最適化すること」と説明する。
SAPの戦略を事業としてみると、ビジネスユーザーへの拡大、SaaSのBusiness By Designの2つは新しい分野となる。前者は新規ユーザー獲得、後者は有機的成長をもたらす。前者はBusiness Objectの買収で大きく前進、現在、2社の製品ポートフォリオの統合を進めているところだ。後者は、SAPのイノベーション力を示すものとして、慎重に市場に提供する構えだ。
厳しい経済環境にあるが、カガーマン氏は「ビジネス環境が厳しいことは、SAPにとってよいことだ」と自信を見せる。北米市場は減速となったが、米国市場はSAPの全ビジネスの3割を占めるにすぎない。アジア・太平洋、EMEA(欧州、中東、アフリカ地域)は好調で、2008年第1四半期、市場シェアは4.2ポイントアップし、32.6%となった。これには、仏Business Objectsの買収で獲得した3.3ポイントが含まれる。
「買収と有機的の両方で成長しているベンダーは、業界ではほとんどいない」(カガーマン氏)
これは、2位である米Oracle(16.1%)の2倍であり、3位の米Microsoft(3.4%)とも大きな差をつけている。さらには、まだ開拓できる市場が15%残っていることにも触れ、今後も見通しは明るいとの見解を示した。
「手軽に導入できるSAP」を中堅企業に届ける
「SAPはハードルが高い」というイメージが払拭されつつある。長期的な費用を考慮すると、SAPは実は安価と考え、SAP Business All-in-Oneを導入する中堅企業が増えている。SAPが提供する実現機能確認シートに注目だ。一覧をチェックすれば購入前に費用の詳細が分かる。機能追加の際の費用も「見える化」できる。
なぜSAP ERPを導入するのか――女性衣料品通販ピーチ・ジョンの場合
ピーチ・ジョンは、女性向け下着などのカタログ通販で人気を集める。ピーチ・ジョンが、2009年の稼働を目指してSAP ERP導入プロジェクトに取り組んでいる。ネット販売店舗が急拡大し、継ぎ足すように対応してきたシステムをSAPでどう変えていくのか。2007年11月のワコールの完全子会社化に伴い内部統制強化も課題となっている。
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