最低限のバックアップはしているけれど?Windows Server環境バックアップ実践 [準備編](3/3 ページ)

» 2008年05月27日 08時00分 公開
[谷川耕一,ITmedia]
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バックアップ用ハードウェアの選択

 バックアップツールは決まったので、次のステップではハードウェア構成の検討だ。現状、1次メディアはコスト面を考えるとハードディスク装置となるだろう。とはいえ、1次バックアップ用のメディアにトラブルが発生することを心配すると、最終的には2次メディアとしてテープにバックアップすべきかもしれない。しかしながら、大容量で高速なテープ装置はかなり高価であり、我々のような零細企業ではおいそれと導入できるものでもない。

 ということもあり、1次メディアであるディスク装置の冗長性を高めることで、今回はバックアップ用の2次メディアは用意しないことにした。冗長性を高める一般的な方法は、RAID対応のディスク装置の選択だ。現状、RAID対応の安価なNAS(Network Attached Storage)が数多く発売されている。ホームユースの極めて安価なものもあるが、少なくとも24時間稼働を前提としたスペックのものを選ぶこととする。

 そこで選択したのが、バッファローのTeraStation PROだ。同社にはホームユースのさらに安価な製品ラインアップもあるが、こちらならば24時間稼働させることを前提に設計されている。なによりも安いというのが、選択のポイントだ。2TBの容量で購入価格は10万円を切る。さらに、メンテナンス用のハードディスクも容易に手に入りそうだという点も評価した。

 当初は、1台のNASにすべてのバックアップを実施する予定だった。しかしながら、Symantec Backup Exec 12では複数マシンのバックアップを一元管理するには管理コンソールとなるマシンを必要とし、そのマシンのローカルディスクにバックアップデータをため込む。いったんローカルディスクに落としたバックアップデータを、2次メディアのテープ装置代わりに用意したNASに転送する機能もあるが、今回はコストと手間の削減から2次メディアは用意しない。そのため、管理コンソールとなるマシンのローカルディスクを冗長化する必要がある。

 そこで今回もう1台追加で導入したのが、iSCSIに対応したディスク装置だ。iSCSIという接続方法はまだそれほどメジャーではないかもしれないが、SCSIプロトコルをTCP/IPネットワーク上で使用する規格であり、ネットワークケーブルで接続すればマシンからはローカルディスクとして認識される。2〜3年前は種類もあまりなく、高価だったが、こちらもバッファローから安価なものが提供されている。選択したTeraStation ISは、RAID対応の容量2TBのもので価格も15万円ほどだった。

 前述したように、バックアップ作業を集中管理するためのコンソールとなる専用サーバも必要だ。これも当然24時間連続稼働させることとなるので、サーバースペックの信頼性のあるマシンを選ぶことにする。とはいえ、トランザクション処理を行うわけではないので、それほど高スペックのマシンは必要ないと判断。10万円前後と比較的安価なものを選択し、のちのち別用途で利用することも考慮してメモリだけは多めに搭載しておくこととした。

 そして、忘れてはならないのが電源だ。サーバやストレージの信頼性を上げても、電源が不十分では全体の信頼性を欠くことになる。実際わが社でも、2006年8月14日に発生した架線切断による首都圏を中心とした大規模停電の際に、サーバの一部にトラブルが発生し復旧に大きな手間がかかってしまった。重要なサーバはUPSに接続していたのだが、接続していなかったサーバにハードウェア障害が発生し、停電復旧後も正常稼働しなくなってしまったのだ。UPSも最近はかなり安価になっており、PCサーバ1台程度であれば1万円程度のUPSでまかなえる。今回のバックアップ用ハードウェアにも、十分な容量のUPSを用意した。

 中小企業規模をイメージして、データとシステム全体のバックアップ両方の必要性、そしてバックアップ用ツールと必要なハードウェア選択について紹介した。ここまでで数10万円の投資がなされているが、4〜5年ほど前に同スペックの環境を構築しようとすれば100万円を軽く超えていただろう。そう考えると、古いバックアップ環境を一新し、さらに強化するには、費用面からもベストな時期にさしかかっているのかもしれない。次回は、実際のバックアップ環境の導入の様子を紹介する。

谷川 耕一

ブレインハーツ代表取締役。AI、エキスパートシステムがはやっていたころ、開発エンジニアに。その後雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報担当者などを経験。現在は、オープンシステム開発をおもなターゲットにしたソフトハウスの経営とライター仕事の二足のわらじを履いている。学生時代には環境保護や自然保護を学んでいたこともあり、人に、地球に優しいITとは、について考えている。ブログ→むささびの視線


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