―― 自分がニュータイプだとして、オールドタイプとの違いはどこだと思いますか?
これまでも電車の中でプログラムを作ることが多かったのですが、最近、引っ越したら長距離なのにいつも電車に座れなくなってしまったんです。それで、座れなくても背中さえ固定させることができれば、快適にプログラムできるようになってきました。電車の中を移動オフィスにできるのはニュータイプかなと思います。たまに電車酔いしてしまうので、まだまだ修行が足りませんが。今後は、山の中を散歩しながらとか、自転車に乗りながらプログラミングできる技を身につけたいです。環境を変えてコーディングをするのが嫌いでないので、そういう意味では転職などにもさほど心理的な障壁は感じないですね。
―― プログラマーの能力は生まれ持ったセンスによる部分が大きいと思いますか?
能力ではなく適性がある気がします。物理学者のジェームズ・アレンは「運のよい人々とは、強い信念を維持し、数々の犠牲を払い、粘り強い努力を続けてきた人々である」と述べていますが、まさにその通りで、時間をかけて焦らずコツコツ取り組むことがプログラマーの適正といえるのではないでしょうか。
「なでしこ」を作った経験から、ある程度論理的な思考ができないとプログラムを作れないことも分かりましたが、これはちょっとした努力で身につきます。プログラミングというと、一般の方には難しい計算がたくさん出てくるという印象があるようですが、それ以上に辛抱強さがないと続けることができません。そこで、Mac OS XのAutomatorやSqueak eToysなど、一覧から選ぶだけのプログラミングであれば、それほど辛抱強くない人でももっとプログラミングできるようです。それほどセンスがなくても、興味があればプログラミングできるような仕組みを作ることができればと日々考えています。
―― Windowsしか知らないプログラマーはどうですか?
コテコテのWindowsプログラマーなので耳が痛いです。しかし、最近では、クライアントではJavaScript/ActionScript、サーバではPerl/PHP/Java……と、OSに依存しない言語で開発することがほとんどです。なので、OSよりも使える言語やフレームワークの方を気にした方がよいかもしれませんね。
―― インタプリタ言語でプログラミングのニーズはどの程度満たせると思いますか?
日々の定型処理とか、個人から中小規模のアプリケーションなら十分インタプリタで間に合います。去年は、インタプリタの上で動くインタプリタを作りましたが、さすがにそれは遅く実用になりませんでした。速度が必要なものやコアなものを作るには、やはりコンパイラが必要です。コードを書いていて楽しいのは、コンパイラ言語の方かもしれません。
―― 「自分はもしかしたらすごいプログラマーかも」と思ってしまうときはありますか?
自分で自分の価値を過大評価しないよう、謙遜で謙虚にしていることも大切ですが、ときには自画自賛もしないと楽しく仕事ができないですよね。何かプロジェクトが完了するたびに「自分ってすごい! よくやりきった!」と自分を褒めてあげることにしています。
―― 正直、コードを書かない人に何か言われたくないと思っている?
人に使ってもらうために作るアプリケーションですから、コードを書かない人の助言こそためになると考えます。興味を持って発言してくれる人の意見は尊重するべきです。ただし、すべての人の意見を取り入れることはできませんので、そこからの取捨選択は腕の見せどころですがね。
―― コードを書きたくて書いてますか? それとも自分の欲求を満たす方法としてコードを書いていますか?
毎日、かなりの量のコードを書いていますが、書き足りたことはありません。あまりにも1日が短くて時間が足りないです。朝起きて気付くと、もう寝る時間……の繰り返しです。コードを書くのも好きですが、やはりコードが形になった時の満足感は何にも変えられません。誰もやったことがないものに挑戦するのは楽しいですよね。
―― 国または民間企業が実施している情報処理の資格を持っていますか?
情報処理の資格は持っていませんが、宅地建物取引主任者なら持っています。資格試験は好きなので、ゆとりができたら何か挑戦してみたいです。
―― 大物「ハッカー」といえば?
ハッカーと聞いて東京大学大学院の竹内郁雄先生が思い浮かびました。
―― 国内外を問わず、尊敬している「プログラマー」は?
Perlのラリー・ウォール、Rubyのまつもとさん、HSPのおにたまさん、ドリトルを開発された一橋大学の兼宗進先生を尊敬しています(みんなプログラミング言語の作者です)。
また、未踏でお世話になった、農工大の並木美太郎先生や自作OSのOSASKを開発されている川合秀実さんにあこがれています。同世代では、Tonyu-Systemを開発している長慎也さんや、Rubyの処理系YARVを開発されている笹田耕一さん、そして、身近にいる仲間やウノウの同僚たちを尊敬しています。みんなそれぞれに得意分野があり専門知識を持っています。
―― 「未踏は出会い系」という発言をされておられますが、未踏の魅力を教えてください。
何か作りたいものがあるなら、ぜひ応募することをお勧めします。未踏プロジェクトを通して知り合った人はとても面白い人が多いです。未踏OBの集いも定期的に開かれていますので、未踏終了後もOB同士交流する機会もあります。志を同じくする仲間とめぐり合う絶好のチャンスだと思います。
―― 自分より年下で注目しているプログラマーは?
3度の飯よりActionScriptが好きな新藤愛大さんや、Active Basicを開発されている山本大祐さんです。
―― あなたが「この人の回答が見たい」と思う人を3人挙げてください
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