DreamWorks――「ストレージは日用品」映画制作を支える(1/2 ページ)

DreamWorksでは毎日、最先端のHPC技術を利用して膨大な量のビデオデータをやり取りしている。

» 2008年05月29日 08時48分 公開
[Chris Preimesberger,eWEEK]
eWEEK

 「シュレック」「マダガスカル」「ビー・ムービー」などのCG(コンピュータグラフィック)による映画を制作しているDreamWorksにとって、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)は極めて身近な存在だ。

 Disneyのアニメーションスタジオで7年間働いた後でDreamWorksに入社して9年になるシニアテクノロジストのスコッティー・ミラー氏は、カリフォルニア州サンタクララのHyatt Regencyホテルで5月19〜21日に開催された「Platform Global Conference」で講演を行い、「ストリーミングビデオのレンダリングに使用するHPCは大きく進歩した」と聴衆に語った。

 「わたしがDreamWorksに入った1999年の時点では、社内に全部で140個のコア(プロセッサ)があったが、今では1万個以上――実際、わたしには数え切れないほどのコアがある」とミラー氏は語った。「以前は、非常に強力なコンピュータを物理的に共有する必要があった。コンピュータを箱に入れ、1つのスタジオから別のスタジオに移送して映画を制作していたのだ。メモリをめぐって殴り合いのけんかになることもあった。当時、メモリの価格は1Mバイト当たり4000〜5000ドルもしたのだ」とミラー氏は語る。

 「1999年には、われわれが今日使っているような帯域幅、ツール、コンピューティングパワーがなかった。しかし今では、マルチコアプロセッサ、コンピューティングパワーの動的割り当て、膨大なストレージ容量がある。こういった進歩を目の当たりにするのは素晴らしかった」(同氏)

 ミラー氏によると、6月6日に公開予定のDreamWorksの最新のCG映画「カンフー・パンダ」は3D風のスタイルで作成されており、制作には2500万CPU時間と約3年の期間を要したという。

 「これに対し、最後の8Tバイト映画となった“シュレック”の制作には約500万CPU時間と4年の期間を費やした。そしてこれらのCPU時間の大半は、制作期間の最後の3〜4カ月に集中している」とミラー氏は語る。

 ミラー氏によると、3D技術を駆使して制作された「カンフー・パンダ」はこれまでで最も先進的なCG映画であり、約50Tバイトのストレージを必要とするという。

 「例えば、パンダの皮膚の毛、1本1本を考慮に入れる必要があった」とミラー氏は語る。「それぞれの毛には厚みがあり、アクションシーケンスにおける動きに応じた挙動パターンがある。毛に光がどんなふうに当たるかというのも考慮すべきファクターの1つだ。絹の服の処理にも苦労した。映画の大半は基本的に動物の戦いで、水中の場面や炎が現れる場面も多い。こういったアクションをCGでうまく表現するのは極めて難しい」

 同氏によると、強力な処理パワーと膨大なCPU時間は、最終的に素晴らしい映画として結実したが、きちんとしたものを作るには手抜きは一切許されないという。

 「例えば、“ポーラー・エクスプレス”のような映画についていえば、こういった作品は概して非常によくできており、あまり批判したくはない。しかしよく見ると、登場人物の目が死んでいて、一部の表情が不自然だ。その結果、人物が少し不気味になっている」とミラー氏は指摘する。

 「求められる水準は非常に高い。結果の完成度が少しでも低ければ、視聴者に気付かれてしまう」

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