Jazzが伽藍とバザールに変化をもたらす日IBM RSDC 2008 Report

IBM Rational Software Development Conference 2008で、Jazzの成果物をベースにした初の商用製品が発表された。年度内にはさらに複数の製品が登場し、ソフトウェア開発におけるコラボレーションが強力に支援されることになる。

» 2008年06月03日 18時28分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 IBMが米国時間の6月1日からフロリダ州オーランドで開催中の年次カンファレンス「IBM Rational Software Development Conference 2008」。前年を20%以上上回る3500人超のビジネスパートナーおよびユーザーを前に、初日の基調講演で壇上に立ったのは、IBM Rational Softwareでゼネラルマネジャーを務めるダニー・サバー氏。

 同氏は分散化傾向にあるソフトウェア開発の現状、そして複雑化する開発プロセスでどう透明性を確保するかといった、昨今のソフトウェア開発を取り巻くさまざまな要因について説明した。「ソフトウェア開発とそのデリバリーがどのようなビジネスであってもより重要な位置を占め、エンジニアは作成したシステムがビジネスに与える成果に責任があることから、これまで以上にコラボレーションとチームワークが必要不可欠な要素となる」とサバー氏。そして、分散する開発チーム間で最善のコミュニケーションを可能にするための製品群を一挙に発表した。

基調講演を行うダニー・サバー氏

「2008年は旅の始まり」――3製品が登場

 「Jazzにとって2007年は『成熟』がテーマだった。そして今年は商品化である。つまり、われわれにとっても2008年は旅の始まりである」とサバー氏。2008年度にはJazzプラットフォームの製品が多数登場することを明言し、その露払いとなる3製品が紹介された。

発表された3製品と、その位置づけ

 発表された製品は、分散開発プラットフォーム「IBM Rational Team Concert 1.0」、要求管理ツール「IBM Rational Requirements Composer」、テスト管理ツール「IBM Rational Quality Manager」の3製品。特に注目したいのが、Jazzの成果物をベースにした初の商用製品となるTeam Concert 1.0だろう。

 「コラボレーションのパワー、それは、優れた才能を結びつけていくことにほかならない」とサバー氏。アジャイル開発そのものもサポートし、チームコラボレーションや透過的な開発を可能にすることを目指して開発されてきたJazz。その成果物をベースにした初の商用製品となるTeam Concert 1.0は6月30日にリリースを予定しており、現時点でExpress-C、Express、Standardという3つのエディション、2009年には最上位となるEnterprise版を含めた4エディションのラインアップとなる予定だ。また、動作プラットフォームとして、現時点ではWindowsとLinuxをサポートするが、System iおよびSystem z上での稼働もサポートされる予定であるという。

 エディションの違いは、開発チームの規模によるもので、Express-C Editionであれば、10名までの開発チームを対象にしている。加えて、Express-C EditionでTomcatやDerbyを使用している部分について、上位エディションではDB2 Express、DB2、Oracle、WebSphereなどを利用することが可能となっている。価格についてはまだ明らかにされていないが、Express-C Editionについては6月30日以降、JazzプロジェクトのWebサイトからダウンロード可能となる予定。

 このTeam Concertとともに利用する開発支援ツールといえるのがRequirements ComposerとQuality Managerとなる。Requirements Composerが、プロジェクトに対する要求を固めていくのを支援するツールで、Quality Managerが、テストの実行計画を管理するためのツールとなる。また、ClearCaseやClearQuest、BuildForgeなど既存の開発支援ツールもTeam Concertとの連携機能を強化したものがリリースされる。

 「結局のところ、耳(コミュニケーション)が重要なのです。ソフトウェア開発におけるコミュニケーションの重要性に気づいたとき、新たな世界が開けるのです。そして、われわれの耳は2つ。1つは常に顧客に向けておくべきです」(サバー氏)

 オープンソースの世界に少し詳しい方なら、エリック・レイモンド著の「伽藍とバザール」(The Cathedral and the Bazaar)を一読されたことがあるかもしれない。IBMは、伽藍方式で開発されることが多かったプロプライエタリなソフトウェア開発の現場に、チームという概念を持ち込んだことで、伽藍の中にバザールモデルを持ち込もうとしているのだ。

 「IBMは、ソフトウェア開発およびデリバリーはどうあるべきか、その将来像を再定義しているのです」(サバー氏)

データフォーマットとプロトコルの統一を狙う

データフォーマットとプロトコルが統一されたとき、Jazzが持つ意味は大きい

 今回のカンファレンスでTeam Concertの発表以上に重要なのが、「Open Services for Lifecycle Collaboration」というイニシアチブの発表だった。同イニシアチブが狙うのは、ソフトウェア開発に使われるツール間で、開発リソースに関するデータフォーマットやプロトコルを統一し、ツール間での相互運用を容易にすることにある。このイニシアチブがうまく運べば、それはJazzプラットフォームで異種環境の取り込みも可能になることを意味する。Jazzプラットフォームの下で、他社の開発ツールなども連携させていこうとするRationalの今後の方向性が見て取れる。

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