「あんたに言われたくない」――信頼関係欠如のコミュニケーション職場活性化術講座(2/2 ページ)

» 2008年06月04日 09時07分 公開
[徳岡晃一郎,ITmedia]
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すべてのベースは信頼関係

 また、コミュニケーションのメディアもプロセスを快適に進める決め手です。直接会って話し言葉で伝える(これにも、大勢へ向かってのスピーチや演説、独り言、対話など多々あります)。紙に書いて伝える(手紙もあればメモもあります)。電話で伝える。メールで伝える。写真や絵で伝える……。皆さんはどの方法が得意でしょうか?また相手はどれを望んでいるかを考えたことがあるでしょうか?

 そしてすべてのベースには、相手との信頼関係があります。信頼している人から、厳しいことを言われれば、「そうかな、しょうがないな」と思っても、信頼していない人から、同じように厳しいことを言われれば、「あんたに言われたくはないね」となってしまうものです。

 このようにコミュニケーションとはとても複雑なものなので、先ほど引用した辞書のように、ただ「伝達しあうこと」と一口に言われても、それを実行するのは大変なことなのです。

 それゆえ、ここでもう一歩踏み込んだ定義が出てきます。それは、「コミュニケーションとは、自分の伝えたいことを相手にわからせ、その人にそのとおりに動いてもらうこと」というものです。実に明快にコミュニケーションの「目的」を表現していると言えないでしょうか?そう、コミュニケーションとは自分の意志を実行するための手段ということなのです。逆に言うと、コミュニケーションをうまくとれる最低限の条件としては、「自分が何をしたいのか」という意志が必要だということでもあります。

 そういう意味で言うと、実際私達がコミュニケーションに悩むとき、得てして自分の意志が薄弱だったり、強い心を持ってことに望んでいない場合があるのではないでしょうか?心から相手に自分の意に沿って動いてもらいたいと思うのは、恋人に自分のことを好きになってほしいと思うような場合を想起していただければ分かると思います。そんなときは、なお一層、懸命に、ありとあらゆる手段を使ってコミュニケーションの努力をしますよね。

 私たちはコミュニケーションというと、先ほど言いましたようにスキルやカン・コツ・ツール、メディアなどをすぐに思い浮かべてしまうのですが、実はいくらそれを勉強しても、なかなかコミュニケーションは起きない現実を私たちは知っているのです。そんな工夫をする前にもっと大事なことがあるのです。「一体私は何をしたいのか」、「一体私は何をすべきなのか」これを自信を持って言えるかどうか、そこをきっちりと築いていくことがとても大事なのです。そうすればまずは道はおのずと開かれていくのです。

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プロフィール

とくおか・こういちろう 日産自動車にて人事部門各部署を歴任。欧州日産出向。オックスフォード大学留学。1999年より、コミュニケーションコンサルティングで世界最大手の米フライシュマン・ヒラードの日本法人であるフライシュマン・ヒラード・ジャパンに勤務。コミュニケーション、人事コンサルティング、職場活性化などに従事。多摩大学知識リーダーシップ綜合研究所教授。著書に「人事異動」(新潮社)、「チームコーチングの技術」(ダイヤモンド社)、「シャドーワーク」(一條和生との共著、東洋経済新報社)など。


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