Microsoftの開発者の間で、データに対する関心がにわかに高まっている。
フロリダ州オーランド発――Microsoftが「.NET」プラットフォームを提供し、開発者の前に広がる未来がより大きくなったことで、開発者がアプリケーションを開発および運用する際のデータの重要性も増した。
Microsoftのアプリケーションプラットフォーム部門ゼネラルマネジャーを務めるジョナサン・ペレーラ氏によれば、「.NETに関する知識を有する開発者をターゲットにし、彼らが斬新かつ有意義な方法でそうしたツールセットを活用できるように支援する」ことが、同社の課題の1つになっているという。例えば、開発者が同プラットフォーム上で開発するアプリケーションへの効率的なデータ統合などにMicrosoftは力を入れている。
同社の開発者部門上級副社長であるS・“ソーマ”・ソマセガー氏は、現地で開催された「Microsoft Tech・Ed Developer 2008」に出席し、次のように話した。「こうした取り組みは、Microsoftが多種多様な開発者に新しいスキルを習得する手間をかけさせることなく、いかに彼らをサポートしているかを物語るものだ。Microsoftは、本質的にはプラットフォーム企業であり、多くの開発者がわれわれのプラットフォーム上で開発できるようになることを望んでいる。開発者ユーザーこそが、当社の最重要ユーザーだ。今後も、Microsoftプラットフォーム上で開発をするための製品やツールを彼らに提供していきたい」
だが、「ツールやサービスの拡充に注力すると同時に、単一のプログラミングモデルにこだわり続けているのも事実である」と、同氏は話す。「“一度記述すれば、どこでも動作させられる”という格言があるが、われわれは“一度学べば、何にでも通用する”と主張している。Microsoftのプログラミングモデルを会得すると、(Microsoftプラットフォーム上なら)どこででもアプリケーションを開発できるようになるのだ」(ソマセガー氏)
同氏はさらに、「今やアプリケーションにデータは欠かせない」と続けた。「データを扱えるアプリケーションが、アプリケーション開発の中心を占めるようになっている。LINQ(Language Integrated Query)を利用すれば、プログラミングとデータを1つにできる。ここに“SQL Server”“.NET Framework”“Visual Studio”を加えると、データを保存、モデル化、クエリ、同期したり、可視化および解釈したりすることができるプラットフォームになる」(ソマセガー氏)
MicrosoftがTech・Edイベントで行った重要発表の中には、「Microsoft Sync Framework」の新たなコミュニティー技術プレビュー(CTP)版についても含まれていた。Microsoft Sync Frameworkは、アプリケーションやサービス、デバイスのコラボレーションとオフライン化を可能にする同期プラットフォームだ。
「今夏の終わりにSQL Server 2008がリリースされれば、階層化されたデータやイメージ、空間データといった、あらゆる種類の情報を管理できるようになる」(ソマセガー氏)という。Microsoftは、大規模なエンタープライズシステムばかりでなく、デバイス向けのSQL Serverもサポートしており、「クラウドストレージを活用するためのSQL Serverデータサービスの提供を通して、ユーザーがかつてないスケーラビリティを実現するのを支援していく」と、同氏は述べた。
一方、フレームワーク関連では、MicrosoftによるADO.NETのサポートにより、開発者はデータベースをモデル化できるようになるという。ソマセガー氏は、SQL Server 2008、.NET Framework 3.5、Visual Studio 2008の3製品を組み合わせれば、「同一の言語構造を使用している自前のプログラム内から、データのクエリが可能になる」と説明した。さらに続けて、「TFS(Team Foundation Server)で自画自賛できる点の1つは、ソフトウェア開発過程のありとあらゆるものを詰め込んでおけるところだ。ユーザーが大量のデータを保管できるように工夫するのは、優れたサービスを提供していることを意味するため、非常に誇らしい気持ちになる」と、同氏は述べている。TFSは、ソース管理やデータ収集、リポーティング、プロジェクト追跡などを行うMicrosoftの製品で、コラボレーション性の高いソフトウェア開発プロジェクトで利用される。
Microsoftのテクニカルフェローで、データストレージ部門に所属しているデビッド・キャンベル氏は、Digital Equipmentを退社してから14年間、SQL Serverチームとともにデータを扱う開発者を対象としたソリューションを考案してきたという。「SQL Serverをデバイスに対応させたり、大型サーバ向けにスケールアップさせたりしたが、今度はクラウドサービスを開発している。単純なリレーショナルデータからBLOB(Binary Large Objects)まで、すべてのタイプのデータをサポートし、統合作業を進めている」(キャンベル氏)
SQL Server 2008については、空間データとファイルストリームのサポートが追加されると、同氏は2つの新情報を明らかにした。さらに、データの統合、分析、可視化、リポート、同期といった機能も搭載され、「データに対してできることの幅が大きく広がる」という。
「SQL Serverはデータベース製品ではあるが、中身にはビジネスインテリジェンス(BI)プラットフォームも含まれているということだ。リポーティングサービスも利用できる。BIのリアルタイム性を向上させ、アプリケーションに埋め込もうとしている」(キャンベル氏)
このほかMicrosoftは同イベントで、明示的かつ包括的な分散型キャッシュプラットフォームである「Velocity」も発表した。「キャッシュをデータベースおよびアプリケーションの上に位置させる」製品で、ASP.NETにセッションキャッシュとして統合することができると、キャンベル氏は話している。
よく似ているのは、Oracleの「Tangosol」技術だという。Tangosolは2007年、Oracleによって買収された。現在は単にTangosolという名称でOracle傘下に入っているが、同社の「Coherence」製品は、最近増えつつあるリイルタイムでのデータ分析に対する需要を満たし、負荷の大きいミドルウェアおよび高パフォーマンストランザクション(しばしばXTP[Extreme Transaction Processing]と呼ばれる)を処理する、実績と信頼性のともに高いインメモリデータグリッド技術である。オープンソースなら「Memcached」が同様のソリューションになると、キャンベル氏は述べた。
同氏は、「(Velocityに)似ているという点では、Tangosolが一番近いだろう。.NETを理解していれば、Velocityもすぐに使える」と話し、これもいずれ.NETプラットフォームに組み込まれる見込みだと付け足した。
「ただ、レイテンシーの短縮や、ある場所からほかの場所へのデータの移動といった問題は残っている。ストレージコストが消失したと思えるように、デザインしなければならない」(キャンベル氏)
キャンベル氏は、第一に「適切な形式の適切なデータを,適切なタイミングで取得することが重要だ」と話す。Microsoftはこれを実現する製品を提供しており、NewsGatorなどの顧客が購入している。Microsoftの幹部によると、NewsGatorは25億件もの記事を管理するのに、SQL Server 2008を使用しているという。
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