中堅中小企業の経営基盤改革術

SAPでビジネスネットワークを構築、調達プロセスを合理化――フランスのSidelSAPPHIRE 2008 Berlin(1/3 ページ)

「SAPPHIRE Berlin 2008」では、SAPユーザーによる成功事例が多く紹介された。容器成型機ベンダーのフランスのSidelは「SAP SCM」の一部であるSNCを導入し、ビジネスのやり方を根本から変えた。

» 2008年06月05日 05時20分 公開
[末岡洋子,ITmedia]

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 独SAPが5月にドイツのベルリンで開催した年次イベント「SAPPHIRE Berlin 2008」では、SAPユーザーによる成功事例が多く紹介された。その1社、容器成型機ベンダーのフランスのSidelは「SAP SCM」の一部であるSNC(Supplier Network Collaboration:旧製品名「SAP ICH」)を導入し、SAPが提唱するビジネスネットワークをいち早く構築して、ビジネスのやり方を根本から変えた。

 「事業部門との関係が逆転した」とSidelでISマネジャー務めるテリー・ガルバニ氏は語る。SAP Core Competenceマネジャーも兼任する同氏に、SNCを導入した背景やプロジェクトについて話を聞いた。

「10年前はIT担当者だったが、いまはIM担当者」と語る

ITmedia SNCの導入に至った背景は?

ガルバニ Sidelは、ミネラルウォーターのボトルなど、液体食品パッケージ技術を提供します。ボトルの設計から、充填、ラベル、パッケージング、パレット化、物流まで統合ソリューションを提供します。われわれはエンジニア企業であり、サプライヤーをアセンブルしながらパッケージ技術を包括的に提供しています。

 1つのラインに複数サプライヤーの機器が入ります。Sidelの子会社や関連企業、外部企業を含むこともあり、非常に複雑です。世界4カ所にある生産施設で年間1万8000以上のモールド(型)を生産しており、650以上のコンセプトデザインを持ちます。顧客は190カ国以上にあり、24時間365日体制で稼働しています。

 顧客側からみると、全責任はわれわれにあります。ミネラルウォーターのEvianなど、マーケティング部分で協業する例もあります。マーケティングが抱いている構想が実際に実現可能かどうかを検証して進めていくのです。このようなことから、われわれにとってサプライヤーは、戦略的に非常に重要です。

 今回、Sidelとサプライヤー間の調達関連プロセスを合理化することを目的に、SNCを導入しました。これにより、発注情報など、サプライチェーンに関するあらゆる情報を提供するエンドツーエンドのツールをサプライヤーに提供できます。サプライヤーは、Sidelが必要とするサプライ関係の情報をリアルタイムに入手できます。そして、世界に散在するサプライヤーが、対応可能か、納期はいつか、などの情報をSidelに送り返します。

 これは単なるソリューションではなく、プロセスです。単なるツールではなく、ビジネスのやり方を変えるものです。Sidelはフランスの企業ですが、新CEOはさらにグローバル企業を目指しています。SNCはこれを実現するものです。われわれの大きなターゲットに中国がありますが、SNCは中国語対応もしています。

ITmedia SNCプロジェクトについて教えてください。

ガルバニ 外部プロセスにもフォーカスし、プロセスを外部に拡大したビジネスネットワークの構築を目指しました。ビジネスネットワークが効率性の土台となるのです。

 SNCソリューションは、既存のシステムランドスケープをつなげて新しいビジネスのやり方を可能にします。SNCが傘となり、全体のビューを外部サプライヤーに提供できます。

 バックエンドにあるSAP R/3 4.6C、R/3 4.7C、ECC 6を、EAI(エンタープライズアプリケーション統合)の「SAP XI」と「SAP NetWeaver」ベースで統合し、SCMを実装します。SCNとWebにより、世界のサプライヤーに同じソリューションを提供できます。

 既存の情報システム統合により、エンドツーエンドでのプロセスを実現しました。サプライヤーに配送時期を細かに指示できるようになり、在庫コストを30%削減できました。SAPのERPとSNCを利用し、サプライヤーはWebからリアルタイムでSidelからの要求を受け取り、対応可能かどうかを返答します。

 これは大きな改善です。というのも、それ以前は、サプライヤーに発注後、入荷予定日の数週間前に確認の電話をしなければなりませんでした。全部のサプライヤーに確認するのは難しく、40%しか納期情報を共有できていませんでした。60%は管理外だったのです。SNCで自動確認を行った結果、納期情報の「徹底度」は80%に改善しました。われわれにとってサプライヤーは戦略的に重要です。これまで以上にプロセスを管理でき、サプライヤーは本当の意味でのパートナーとなりました。

 プロジェクトは2007年5年にスタートし、最初のサプライヤーに提供したのは9月、その後少しずつサプライヤーを増やし、現在は約50社にリーチしました。サプライヤーの数は200を上回りますが、まず戦略的なサプライヤーに導入してもらいます。いまでは、プロジェクトというより、プログラムといえます。

 今後は、6月に中国で提供をスタートし、SAP cFolderのサポートプロジェクトも予定しています。

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