カジノユーザーを操る顧客データInformatica World 2008 Report

「Informatica World 2008」の最終日、Informaticaと協業関係にある米Teradataの副社長、ロン・スウィフト氏がカジノにおけるデータウェアハウスを用いた顧客管理の事例などを紹介した。

» 2008年06月06日 21時37分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 データ統合ソフトウェア大手の米Informaticaは6月3日から3日間開催している年次カンファレンス「Informatica World 2008」の最終日、Informaticaと協業関係にある米Teradataの副社長、ロン・スウィフト氏がカジノにおけるデータウェアハウスを用いた顧客管理の事例などを紹介し、Informtica Worldのテーマであるデータの重要性を強調した。

 「ITで利益を生む方法を考える際、効率性だけでなく“正しいこと”をすることが重要だ」とスウィフト氏は話す。適切な人に適切な情報を提供する基盤をITで構築する必要があるという。

IBMに22年間在籍したというスウィフト氏

 Teradataの調べによると、最近企業の経営層が気に掛けている事柄が変化し始めているという。2002年のトップは利益。売り上げ、長期的な成長、従業員のモラール、企業の生産性という順だった。これが2006年は、顧客ロイヤルティが1位。顧客の間での企業の評判が続き、3位が利益だった。企業の生産性、カスタマーサービスという順に続く。

 「顧客管理への意識が高まり、データの重要性がさらに強まった」と同氏。両社の製品の関係は単純化すると、Informaticaのデータ統合ツールで複数のソースから集めたデータを、Teradataベースのデータウェアハウスで管理し、分析するというものだ。

 「リアルタイムにデータを処理することが企業に利益をもたらす。異なるシステムのデータをスムーズに統合するInformaticaがそこで重要な役割をしている」という。

 「この中にデイトレーダーはいるだろうか。(証券会社の窓口や電話で株式の売買注文をするのが主流だった)ほんの4、5年前と状況が一変した。いまはインターネットでの注文が圧倒的だ。リアルタイムデータがインテリジェンスを生むようになったのだ」(スウィフト氏)

 「過去3年に地球上で作られたデータは、人類がそれ以前の4万年でつくったデータよりも多い」と同氏は状況の変化を強調している。

カジノ経営の起爆装置に

 スウィフト氏は、Teradataの事例としては有名なラスベガスのカジノ店、Harrahsの顧客管理システムについても触れた。

Harrahsの様子

 Harrahsはカジノフロアでの顧客の行動をくまなく把握する。その顧客が過去にいくらくらいフロアでお金を使ったか、どのゲームに時間をかけるかなどさまざまな情報をリアルタイムに管理している。顧客がお金を失って失望するか、あるいはお金を儲けて満足してフロアから出ようとしたときに、例えばVIPルームに招待するなど顧客に新たな「販促」を提供する。

 「顧客がフロアから出る前に手が打てるようになった」とHarrahsの担当者は話す。スフィフト氏によると、常連顧客が来店する回数が以前の月間1.2回から1.9回に増え、システム導入初年度の儲けは2倍になった。年間の投資対効果は389%、システム投資の回収に掛かった期間はわずか3カ月だったとしている。

 カジノで遊ぶユーザーが頭の片隅で一攫千金を夢見る一方、カジノ経営者はデータを資産としながら、顧客を手の平で操っているのが実情のようだ。

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