日本オラクル「第2巻」の意味Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2008年06月09日 08時29分 公開
[松岡功ITmedia]
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顧客の業務変革支援に熱い思い

 とはいえ、こうした事業領域はすでに日本オラクルでも力を入れており、会見の途中までは遠藤氏の発言も、同社の戦略に則ったものに聞こえた。しかし、日本IBMでサービス事業に長く携わってきた遠藤氏の転職への思いを聞いて見方が変わった。

6月5日に都内ホテルで開催された日本オラクル新会長・新社長の就任披露パーティー

 「前職で最後にBTO(Business Transformation Outsourcing)事業を推進していたが、お客様の業務変革を支援する要となるのはビジネスアプリケーションだということを痛感していた。私がやりたいのはお客様の業務変革を支援すること。その点ではSOAプラットフォームも今後ますます重要になる。両分野の有力なソリューションを同時に提供できるのはオラクルだけ。だから私はここに来た」

 大手企業の社長就任会見で、新社長が経営戦略や事業戦略について語るのは当然としても、顧客に対してこれをやりたいと自らの思いを熱く語るケースは極めて少ない。新宅氏が遠藤氏に日本オラクルの「第2巻」の舵取りを委ねたのも、この熱い思いが原点なのだろうと感じた。同時にそれは「第2巻」の理念ともいえる。

 記者会見から3日後の5日、同社が都内ホテルで開いた新会長・新社長の就任披露パーティーには、ビジネスパートナーの首脳陣をはじめ約1000人の招待客が集まった。新宅氏と遠藤氏は、ここでも冒頭の挨拶で「第2巻」をしきりに強調していた。

 来賓の挨拶に立ったのは、コンサルティング分野の大御所で遠藤氏の日本IBM時代の上司でもあったRHJIジャパン会長の倉重英樹氏と、ビジネスパートナーを代表してアシスト社長のビル・トッテン氏。倉重氏が、企業のあり方について興味深い話を披露していたので紹介しておこう。

 「企業は会社とも呼ぶ。英語で言えばエンタープライズとカンパニー。それぞれのもともとの意味を紐解くと、カンパニーは“仲間”。つまり、仲間が集まって楽しく仕事をするという意味合いが、会社にはある。一方、エンタープライズは“大いなる企て”。企業はまさしく文字通り、企てをして業を成すと言う意味だ。したがって、企てを変えることが企業変革となる。誰も会社変革と言わないところがおもしろい。この両面をしっかりと保持しているのが素晴らしい企業。日本オラクルはその1社だ」

 このコメントは、日本オラクルへの賞賛とともに、これから「第2巻」をリードする遠藤氏へのアドバイスでもあろう。

 本で言う「巻」は、物語やシリーズとしては続き物だが、表紙にくるまれた単体だ。本の中で物語を区切る「章」とは根本的に違う。表紙には物語を通しての表題よりも、その巻だけで完結する副題を大きく表示することもある。遠藤氏が日本オラクルの「第2巻」をどのように描くか、注目したい。

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プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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