サービス可用性――その評価手法を知っているか?ITIL Managerの視点から(3/3 ページ)

» 2008年06月13日 08時00分 公開
[谷誠之,ITmedia]
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仮説の構築と分析

 次に「仮説の構築」を行う。該当のサービスが停止する主たる原因はこれじゃないか、とアタリをつけることである。

 立てた仮説に基づき「データの分析」を行う。仮設はデータの分析をよりスピーディなものにすることを支援するが、決して仮説に執着してはいけない。仮説そのものが間違っている可能性もあるからだ。この分析手法には様々なものがあるが、代表的なものはパレート分析(Wikipediaへのリンク)である。

 サービスが停止する頻度とその原因には、「80/20の法則」が成り立つかもしれない。これは「全体の20%の原因が、80%を占める事象を引き起こしている」という経験則である。必ずしもそうとは言い切れないので先入観は禁物だが、この20%にフォーカスして分析することによって、低コストで効果の高い成果が得られるかもしれない。

 データの分析だけでは見えないこともある。「キーパーソンへのインタビュー」は、ビジネスとユーザとの接点やそこに潜む問題点を確実に捉えるのに役立つ。

 「調査結果と結論」をまとめたら、作業チームは簡単で明確な「提言」をまとめることが推奨される。提言はあくまでも簡潔に、しかも現在の問題を明確に捉えているような文書にするのが望ましい。

提言は、次の3つの見出しに当てはまるような形で書くと分かりやすい。

  1. 回避 その提言を実施することによってサービス中断を回避できるようなもの
  2. 最小化 その提言を実施することによってインパクトを減少させるようなもの
  3. 検出 その提言を実施することによってサービス中断の予兆を発見できるようなもの

 最終的な「レポート」をまとめ、責任者(取締役会かもしれない)に提出する。レポートには、サービスの可用性を低くする原因がどこに潜んでいるか、提言を実行することによって何がどのように改善されるのかが詳しく述べられている必要がある。また、有効な提言に関しては、その工数や費用、与えられる利益の見積なども添えておくとよいだろう。

 最後に、現状のサービスの状態やユーザの満足度などを記録しておき、その提言を実行したことによってどう変化したかを「検証」することを推奨する。予想された利益が得られていない場合は、さらに調査や改善を行う必要があるだろう。

谷 誠之(たに ともゆき)

IT技術教育、対人能力育成教育のスペシャリストとして約20年に渡り活動中。テクニカルエンジニア(システム管理)、MCSE、ITIL Manager、COBIT Foundation、話しことば協会認定講師、交流分析士1級などの資格や認定を持つ。なおITIL Manager有資格者は国内に約200名のみ。「ITと人材はビジネスの両輪である」が持論。ブログ→谷誠之の「カラスは白いかもしれない」


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