Googleのエンタープライズ戦略――続編はめじろ押し?Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2008年06月16日 09時07分 公開
[松岡功ITmedia]
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IBMやHPと戦略的提携の可能性も

 両氏のコメントにも出てきたが、富士ソフトにとって今回の提携は、SaaS事業を展開するうえでGoogleのブランドや技術力を利用できるのが最大のメリットだ。一方、Googleにとって富士ソフトは、システムインテグレーターとして多くの顧客やサポートの全国網を持つことから、まさしく強力な販売代理店としての手腕を期待できる。

 では今回の両社の提携から、Googleのエンタープライズ戦略がどのように垣間見えたのか。キーワードは「パートナー戦略」だ。今回の提携の形が、Googleがこれから本腰を入れていこうとしているエンタープライズ事業におけるパートナー戦略の典型的な姿なのではないだろうか。今後Googleは、今回のような提携をどんどん押し進めていくだろう。

 村上氏によると、今回の提携の対象サービスであるGoogle Apps Premier Editionの全世界での販売実績は約10万ドメイン。しかし、その大半はGoogleが直販してきたと推測される。しかも今後、同社のエンタープライズ事業はGoogle Apps Premier Editionにとどまらず、村上氏が言うようにApp Engineによるアプリケーション開発環境の拡大をはじめ、クラウドコンピューティングのリソースをフルに活用したさまざまなサービスが登場してくる可能性が高い。そうなると、Googleのエンタープライズ事業にとって今もっとも力を入れる必要があるのは、Googleのクラウドを資源としてさまざまなサービスをディストリビュートしてくれるパートナーづくりだ。

 Googleおよび富士ソフトによると、今回の両社の提携内容は、独占的なものではない。Googleが今回の契約内容における最初のパートナーに、独立系の富士ソフトを選んだのも、したたかな思惑があってのことだろう。しかも今回はひとまず国内での話だ。

 さてGoogleは、次なるエンタープライズ事業のパートナー戦略をどう進めるか。近い将来、IBMやHPといった大手システムベンダーとGoogleが戦略的提携を行う日が来るかもしれない。

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プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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