仮想アプライアンス入門Beginner's Guide(3/3 ページ)

» 2008年06月21日 02時11分 公開
[Mayank-Sharma,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine
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アプライアンスの変換

 これまでに紹介したアプライアンスから好きな仮想化ソフトウェア用のものを1つダウンロードして、ネットワークソフトウェアの構築やテスト、あるいはネットワークサービスの運用に使っているとしよう。ここで、別の仮想化ソフトウェアへの切り替えが必要になった場合はどうすればいいのだろうか。新たな仮想化ソフトウェアでも同じアプライアンスが使えるかもしれない。だが、それまでの設定やカスタマイズした内容はどうだろうか。

 仮想アプライアンスの移行は厄介な作業だ。事実、ある仮想化プラットフォーム上で開発または導入されたアプライアンスを別のプラットフォームに移行させるための便利なツールが用意されている仮想化ソフトウェアはVMwareだけである。VMware Converterというフリーのツールを使えば、Windowsベースの物理的なマシンを仮想マシンに変換できるだけでなく、Microsoft Virtual ServerやMicrosoft Virtual PC、Symantec Backup Exec System Recovery、Norton Ghost 10、Noton Save & Restoreといった他社のソフトウェアで作成された仮想マシン全体の移行も可能になる。

 また、正式な変換ツールは存在しないが、コマンドラインのテクニックとQEMUの利用によって、VMwareおよびQEMUのアプライアンスをVirtualBox用に変換したり、VMwareのアプライアンスをXen用に変換したりParallels用に変換したりできる。

 2、3のアプライアンスの変換を試せば、そうした処理が何の保障もない、苦痛に満ちたものであることが分かるだろう。しかし、状況は改善されつつある。Dell、Hewlett-Packard、IBM、Microsoft、VMware、XenSourceによって共同で設立されたDistributed Management Task Force(DMTF)が、Open Virtual Machine Format(OVF)最終仕様の公開に向けて活動している。OVFで特に素晴らしいのは、この仕様に従って作られたアプライアンスはOVFをサポートするすべての仮想化ソフトウェアで動作するようになる、という点だ。すでにVMwareは、OVF準拠のアプライアンスをインポートするためのOVFツールを開発している。だが今のところ、ダウンロード可能なOVFアプライアンスは見当たらない。また、VMwareのツール以外には、既存のアプライアンスをOVFに(またはその逆方向に)エクスポートするツールを提供しようという仮想化ソフトウェアベンダーの話も聞かない。

まとめ

 仮想化アプライアンスを実行してみたくなったら、ほぼどんなオープンソースアプリケーションについてもLinuxおよびBSD系ディストリビューションで使える仮想アプライアンスが幾つか見つかるはずだ。アプライアンスのバリエーションや数は、その実行に用いる仮想化ソフトウェアによって異なる。仮想化ソフトウェアとしてはVMwareが最も普及しているが、VirtualBoxXenもすぐ後ろを追っている。大きく差をつけられているように見える4番手のQEMUだが、主としてこちらはプロセッサエミュレーションの能力を重視する人々の間で普及している。

 また、特定の仮想化ソフトウェアに頼ることなく、さまざまな仮想化プラットフォームで動作するアプライアンスをプラットフォーム別の、またはどのプラットフォームでも共通して使えるリリースとして提供している開発元も幾らか存在する。

 プラットフォームを切り替えるための仮想アプライアンスの変換は、まだ先行き不透明な領域だ。とはいえ、一部の仮想化ソフトウェアベンダーは、ベンダーに依存しないアプライアンスの開発に役立つオープン仕様の完成に向けて取り組みを進めている。そうした活動が実を結ぶまでは、使っている仮想化ソフトウェア用のアプライアンスを探し求めてインターネットをさまようことになるだろう。では、あなたにぴったりのアプライアンスが見つかることを祈っている。

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