中堅中小企業の経営基盤改革術

ERP導入の成功および失敗パターン中堅中小企業の経営基盤改革術(2/4 ページ)

» 2008年06月24日 08時00分 公開
[岩上由高(ノークリサーチ),ITmedia]

初回導入

 まずは初めてERPを導入する際に横たわるハードルについて見てみることにしよう。

  • 導入検討段階

 オフコンからのレガシーリプレースの手段としてERP導入を検討する段階である。一般的には、独自開発された財務会計システムがリプレースの対象となる。たとえ部分導入であっても将来的なプランを見据えた検討をすることが理想的ではある。だが、現実としては中堅中小企業では人的リソースの問題でそうした高度な判断を下すのが難しい状況にある。

 中長期計画のない部分導入までも「失敗である」と断定してしまうと、現在の中堅中小における異種ベンダーパッケージ混在による導入スタイル(良い言い方をすればベストオブブリードではあるが)を否定してしまうことになる。ここでは部分導入スタイル自体は中堅中小固有の現実解ということで許容することにしたい。

 ここでのハードルは「ERPを導入すべきかどうかについて検討したか」である。仮にリプレース対象システムが独自開発のものであっても、自社の固有業務に適合しているのであれば無理に変更する必要はないかもしれない。オフコンの保守コストが高いといっても、固有業務に合わせるために無理にカスタマイズしたERPの方が高くつく場合もある。「パッケージの方が独自開発より安価である」という固定観念にとらわれ、誤った判断をしてしまうケースが少なくないのである。

  • 製品選定段階

 どのベンダーのERPを導入するかを選定する段階である。中堅中小企業が自力で自社に適したERPを選定することは困難である。結果的にシステムインテグレーターが提示するベンダーを選択せざるを得ないのであるが、ここにもハードルが存在する。それは「パッケージ適合性を確認したか」という点である。詳細機能を把握して各パッケージを比較検討することは難しいかもしれないが、システムインテグレーターやベンダーに対して自社と同業種同規模の事例提示を求めるくらいのことはできるはずである。

 これをするかしないかによって、身の丈に合ったERP導入か、機能のごく一部しか使っていないのに高額な保守費用を払うことになるかが決まってくるのである。

  • 構築段階

 ERPを自社業務に適用する段階である。ここでのハードルは「スコープの拡散を抑えられるか」という点である。過去のリサーチによれば、中堅中小企業の50%以上がERPに魅力を感じるポイントとして「パッケージに含まれる広範な業務機能」を挙げている。

 一方、導入後にかんしては60%弱がパッケージ機能に対して不満を感じており、期待と現実との差が大きい状況が見て取れる。ERPがカバーできる範囲に対して過剰な期待を抱いてパッケージの適用範囲(スコープ)を広げてしまい、広げた部分について要求が満たせないことに後で気がつくというパターンである。

 「せっかくパッケージが持つ機能なので活用したい」という衝動に駆られるのも無理はないが、そこを抑えて本来の導入目的に専念できるかどうかがこの段階の成否を分ける重要なポイントといえるだろう。

  • 運用保守段階

 導入したERPを実際に稼働させる段階である。ここでのハードルは「運用段階移行に際して十分な準備期間を取れるか」という点が挙げられる。リプレースに際しての既存システムとのデータ整合性の確認、利用部門への事前の周知と教育といった点に十分配慮することが重要である。

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