中堅中小企業の経営基盤改革術

ERP導入の成功および失敗パターン中堅中小企業の経営基盤改革術(3/4 ページ)

» 2008年06月24日 08時00分 公開
[岩上由高(ノークリサーチ),ITmedia]

二次導入

 財務会計業務に続けて、人事・給与業務にERPを導入するといった二次導入の際には初回導入とは若干異なったハードルが存在する。

  • 導入検討段階

 中堅中小企業ではモジュール毎の部分導入を行うケースが半数を占める。しかし、一方で導入済みユーザーの約40%は「ERP拡張を予定していない」と回答している。「ERP拡張」の具体的な内容はさまざまであるので一概には言えないが、特定業務への適用後に別業務での適用や業務間連携といった次のステップへ進まないケースも少なからずあると推測される。

 つまり、独自開発のオフコン時代と同じように塩漬けになってしまうケースがあるということである。そうなってしまう原因の多くは、初期導入で上記に挙げたいずれかのハードルを越えられずに失敗経験をしてしまうことにある。ここでのハードルは「システムインテグレーターを選び直せるか」である。

 初回導入で問題が発生したということはシステムインテグレーターが提案した内容が自社に合っていなかった可能性が高い。導入したERPもそのシステムインテグレーターが提案したものであるわけなので、仮に別ベンダーのERPによる改善策を受け入れたとしても同じ結果に陥る恐れがある。

 つまり、二次導入の初期段階で真剣に検討すべきなのはERPそのものではなく、システムインテグレーターの方であるということになる。しかしながら、オフコン時代から続くシステムインテグレーター依存度の高い体質を考えると、中堅中小企業にとってこれは非常に高いハードルである。今後このハードルを越えられるユーザーがどれだけ増えるかがERP導入動向を左右する大きな要因の1つである。

  • 製品選定段階

 この段階においても重要なのはシステムインテグレーターによる適切な提案である。二次導入で異種ベンダーのERPが混在する状況になるとマスターデータなどが重複する状況が生まれる。そうした状況をユーザー側が予見することは難しい。そこでこの段階でのハードルとしては「想定している導入形態(複数ベンダーERPの組み合わせ)の妥当性を確認しているか」が挙げられる。

 具体的にはシステムインテグレーターに同様の組み合わせでの事例提示や検証環境での実証を求めるといったことになるだろう。

  • 構築段階

 ここでのハードルは「現実的なデータ連携にとどめるられるか」が挙げられる。複数業務に対してERPを導入した状態であれば、業務間で緊密なデータ連携を実現したくなるのは当然であるし、それが目的の1つでもある。しかし、業務ごとの観点でのERP適合性と異なるERP間の連携がうまく両立しないこともある。そうした場合に無理に連携させようとすると、いわゆる「過剰な独自カスタマイズ」を行うことになり、結果として三次導入が困難になったり、保守コストが増大したりといった問題が生じてしまう。

 データ連携のためのカスタマイズ費用が高額になるようであれば、システムインテグレーターに対してより包括的な提案を求めるなどして過剰なカスタマイズに邁進しないように注意することが肝要である。

  • 運用保守段階

 二次導入では初期導入時よりもさらに長いテスト期間が必要となる。データ連携などが新たに加わるため、実運用における月次処理や年次処理をシミュレートしたテストを行っておかないと実運用に入った段階でデータ不整合などの問題が発生する恐れがあるからである。三次導入時にはさらに長いテスト期間を確保すべきであろう。慣れるに従ってテスト期間を短くしてしまいがちだが、実際にはその逆なのである。つまり、ここでのハードルは『前回よりもより慎重に運用段階への移行ができるか? 』ということになる。

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