ゲイツ氏は、ブリンジョルフソン氏が新情報経済とよぶものを的確に把握し、Windowsのマーケットシェアを独占状態のレベルにまで高めたが、そのせいでMicrosoftの営業活動に捜査のメスが入るという事態が勃発した。
同社は、複数の製品を1パッケージとして販売するだけでなく、アプリケーションやユーティリティをWindowsにバンドル(統合といってもよい)している。
1990年代半ばに「Internet Explorer」ブラウザとWindowsを組み合わせて提供していたことで、Microsoftは反トラスト裁判を起こされた。WindowsにInternet Explorerを「タダ」で付けたのは、ブラウザの先駆けである「Netscape Navigator」に追いつくための戦略である。これは確かに効果があり、退けられたNetscapeは以後、完全には立ち直ることができなかった。
Microsoftに対する反トラスト裁判は、ロックフェラー氏のStandard Oilが標的にされた訴訟を思い出させる。ゲイツ氏と同様、ロックフェラー氏も当時は世界一の富豪であり、多くの市民が同氏の事業に公平性が欠けているのではないかと反感を抱いていた。
実際、Microsoftの反トラスト裁判では、何年も前から業界間にくすぶっていた同社への敵意に焦点が当たった。
かつてはゴリアテのIBMに挑むダビデであったゲイツ氏は、瞬く間に自分自身がゴリアテとなり、IBMのみならず、LotusやNovell、Sun Microsystemsなど並み居る企業から石を投げられることになった。こうしたライバル企業の最高経営責任者(CEO)らは、ゲイツ氏の行いに腹を据えかねていたのである。これは、同裁判の判事を務めたトーマス・ペンフィールド・ジャクソン氏も同じだった。同判事は記者会見において、ゲイツ氏およびMicrosoftに対する軽蔑をあらわにし、司法の領域を踏み越えてしまったため、Microsoftによる控訴を棄却した判決を上訴裁判所から覆されている。
競合社にとっては悪夢のような存在であったが、だからこそゲイツ氏はあれほどの高みに上り詰めることができたのだ。同氏のたぐいまれな個性にひかれ、Microsoftへ集まってきた業界の人材は少なくない。
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