中堅中小企業の経営基盤改革術

中堅中小企業のタレントマネジメント戦略人事戦略コンサルタントの提言(2/5 ページ)

» 2008年07月01日 08時00分 公開
[三城雄児,ベリングポイント]

関心期の戦術――面接官を磨け

 知名度の低い中堅中小企業では、面接官の振る舞いが大きな影響を及ぼす。限られた情報と期間で活動せざるを得ない候補者にとって、その会社の印象を決めるのはそこで接した社員、特に印象に残るのは1対1で対応する面接官である。関心期では、採用面接官の振る舞いを徹底的に強化することが重要だ。

 不動産ベンチャー企業のマジェスティック・ライズでは、コンサルティング会社の監修のもと、採用担当者への厳しいトレーニングを実施している。同社はもともと礼節やホスピタビリティを重んじる会社であるが、採用活動についても同じ方針だ。

 面接に臨む全社員がこのトレーニングを受講する。トレーニングの冒頭では、本番さながらの面接ロールプレイングを行い、その様子をビデオカメラに収める。その後、自らのビデオ映像を振り返りながら、面接時の顔つき、あいさつの仕方、質問技法、さらには指先の向きに至るまで、細部にわたり外部コンサルタントや同僚社員から厳しい指摘を受ける。

自覚期の戦術――切り札はアナログ

 インターネットを用いた就職活動は当たり前。募集・連絡は電子メールが中心。このようなデジタル時代の採用活動ではむしろアナログ手法が効果を発揮する。若手世代は「デジタルネイティブ」(物心がついたときからデジタルの中で成長してきた世代)といわれ、デジタル情報の扱いに慣れている。一方、それら候補者に対峙する採用担当者は20代後半から30代、時には40代以上で「デジタル移民」(もともとアナログ中心だった世界からデジタルに移行してきた世代)と俗にいわれる。

 デジタル移民の強みは、アナログとデジタルを使い分けることができる点だ。若い候補者に合わせてデジタル一辺倒になるのではなく、「移民」の強みを最大限生かし、アナログ手法を活用することが有効だ。アナログは、認知期から定着期まですべてのプロセスで有効だが、特に自覚期において効果を発揮する。

 建物総合管理業のザクテクノサービスでは、新卒採用のプロセスにエントリーしてくれた学生が確実に説明会や選考に来てくれるように、エントリー者全員に社員が直筆の手紙を送っている。説明会では文字情報だけではなく、社長や先輩社員が登場して自ら語ったり、採用活動のために特別につくった映像を見せたりすることで、会社の真の姿をビジュアルに伝える。また、個別説明会や面接では、以前なら多数の応募者を呼ぶことにこだわっていたが、昨年からは人数を絞り、1人1人の応募者に対して「人生の先輩として」じっくり話をすることを方針とした。このような一連のアナログ重視の取り組みによって、歩留まり率(エントリー者のうち内定して実際に入社する者の割合)は2割以上も改善、採用できた学生の質も高かったという。

 1日で何百人もの学生を流れ作業のように面接する大企業と差別化するには、1人1人の学生に本音で接する深いアナログコミュニケーションが効果を発揮する。

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