中堅中小企業の経営基盤改革術

中堅中小企業のタレントマネジメント戦略人事戦略コンサルタントの提言(4/5 ページ)

» 2008年07月01日 08時00分 公開
[三城雄児,ベリングポイント]

中堅中小企業の定着化戦略

 「トータルリワードでエンゲージメントを高めよ」

 人材不足に陥っている中堅中小企業にとって、採用だけでなく定着化の戦略も重要である。定着率の向上には入社時点での納得感が重要であることは先に述べた。一方で、既に入社している社員に対しては、どのような方策によって、定着率を高められるだろうか。

  • エンプロイー・エンゲージメント

 定着率を高めるためには、従業員がその組織に所属することに納得と愛着を持ってもらうことが必要である。従業員の納得と愛着に影響を与える領域は多岐にわたる。これらを包括的に見直して従業員が組織にエンゲージ(“婚約”するほどに相手に没頭)する状態を作りだすことを“エンプロイー・エンゲージメントと呼ぶ【図2】。

 エンゲージメントが高い従業員は、定着率が高いだけでなく、自社の商品やサービスに誇りを持ち、会社の業績向上に献身的に取り組む。また、このような従業員は社内外への影響力も強く、企業のブランド向上に大きく貢献する。エンプロイー・エンゲージメントは、中堅中小企業の重要な経営課題である。

【図2】エンプロイー・エンゲージメントの定義
  • 報酬だけではエンゲージメントは実現しない

 では、どうやってエンプロイー・エンゲージメントを実現すればいいのか。まずエンプロイー・エンゲージメントにかんする調査の実施が有効と考える。

 エンプロイー・エンゲージメントの調査項目は、評価、仕事、報酬、環境、人間関係、成長、社会的認知度、組織への共感の8つの領域に分かれる(図3)。この8つの領域がまさにエンゲージメントを生みだす要素でもある。

 報酬水準が高いだけではエンゲージメントは高まらない。特に、組織への共感や企業自体の社会的認知度といった項目が、実はエンゲージメントに強く影響することが分かっている。実際に調査をすると、報酬以外の要素が強化すべき課題として露呈する。

【図3】エンゲージメントを生み出すもの
  • 「報われ感」を生み出す要素、トータルリワードを考える

 中堅中小企業が、人材を定着化させるための要素として、初めに思いつくのは報酬水準の向上であろう。しかし、中堅中小企業において高報酬水準を維持することは、コスト増による競争力低下につながる場合がほとんどだ。規模の利益や資金調達コストの差により、この点に関して大企業と勝負しても、中堅中小企業に勝ち目はない。

 そこで、わたしは、中堅中小企業に対しては「トータルリワード(Total Reward)」を考えるようにアドバイスしている。トータルリワードとは、金銭だけでなく、非金銭的な報酬も含めた従業員に「報われ感」を与えるすべての要素を指す。従業員は給料や賞与など金銭によってのみ報われたという感覚を得るのではなく、周囲からの評価や、地位、役職、スキルアップの機会やオフィス環境など、さまざまな要素によって自分は報われていると感じる。金銭的報酬だけでは差別化できない中堅中小企業は、非金銭報酬も含めたトータルリワードで、大企業と差別化すべきである。

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