聖徳太子になれないなら――組織の統制限界と成長IT Oasis(2/2 ページ)

» 2008年07月05日 08時53分 公開
[齋藤順一,ITmedia]
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合理化だけにITを使うな

 組織というのは複数の人間が共有した目的を実現するために、業務を分担し、調整しながら遂行していく集合体である。組織には複数の人がいるのでコミュニケーションが必須であり、何かをするためには気付きや意思決定が必要で、そのためには知識が蓄積されていなければならない。これらに必要なものが情報であり、ITというのはその情報をコンピュータシステムやネットワークを使って伝達する仕組みである。

 ベンダーがITソリューションやITパッケージを販売する時に顧客の理解を得られない場合や、システム導入後に思ったような成果が出ないことがままある。原因の1つは、ITシステムを業務プロセス改善や合理化、効率化といったプロセスの視点でのみ捉えていることにある。

 ITが組織内の情報流路を改善し、迅速な意思決定を支援し、組織を成長させるツールとして働くものであるという組織の成長視点が抜けているのである。

 ベンダーはシステムを売り込むだけではなく、それを使う組織の情報と意思決定の改革にも踏み込まなければならない。ベンダーが直接、顧客の組織に関わるのが具合悪ければ、上流工程や組織改革、プロジェクトを専門に扱うコンサルタントと組むことも考えるべきであろう。

組織フラット化とIT

 昔は競争優位が企業の重要な戦略であった。他社と違う能力によって差別化をはかって、競争に打ち勝つというわけである。今は違う。スピードで機先を制し、競争相手を振り切り、デファクトスタンダードを作り上げる。それが重要な戦略である。スピードはリードタイム短縮をもたらす。それは在庫、固定費、借入金などの削減に寄与し、資材購入力を強化し、営業力を高めるなど様々な効用をもたらす。

PCのモデルチェンジは数年に一度という時代があった。それが年に一回になり、今では春モデル、夏モデルというように年に何回かモデルチェンジをして、売り出しの最初の一週間くらいで一気に売り切るというビジネスモデルに変わってきた。商品ライフサイクルが短くなったわけである。これを可能にしているのが分業や設計、製造、流通の合理化など要因は多数あるであろうが、中核を成すのはITのチカラである。

 単にITを導入しただけではダメで、ITを活用して組織はフラット化し、情報に敏感な組織を作ることが必要なのだ。管理限界のために階層が深くなると情報が遅延したり、歪められたりする。素早く、正しい情報を意思決定者に伝えるにどうすればいいのか。階層を浅くすることである。

 IT導入は組織構造に影響を及ぼす。そうでないのはOAやFAである。聖徳太子のような管理統制を目指すのは容易ではないが、それに近づくために大きな支えになるのがITなのである。

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プロフィール

さいとう・じゅんいち 未来計画代表。NPO法人ITC横浜副理事長。ITコーディネータ、上級システムアドミニストレータ、環境計量士、エネルギー管理士他。東京、横浜、川崎の産業振興財団IT支援専門家。ITコーディネータとして多数の中小企業、自治体のIT投資プロジェクトを一貫して支援。支援企業からIT経営百選、IT経営力大賞認定企業輩出。


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