SAPのアドオン開発は悪か? SOAもハイブリッドが主流に(2/2 ページ)

» 2008年07月07日 08時30分 公開
[浅井英二,ITmedia]
前のページへ 1|2       

SOA実践を真剣に考えると新たな課題も見えてくる

 もちろん、こうした差別化と効率化を併せて実現するのは、SAPが提唱するエンタープライズSOAでも追求する世界であり、SOAの基盤を構成するレイヤは、「ユーザーインタフェース」から始まり、「プロセス制御」「エンタープライズ・サービス・バス」「サービスリポジトリ」「マスターデータ管理」など多岐にわたる。これらに加え、長年企業の基幹システムで実績を重ねてきたIBMの技術や製品、例えば、WebSphere製品群などがさらなる付加価値を提供できる領域も多いはずだ。

 ユーザーインタフェースのレイヤひとつ取っても、幅広い端末をサポートするモバイルソリューションやLotus Notesなど、IBMが提供する選択肢は多い。1月下旬、フロリダ州オーランドで開催されたIBMの「Lotusphere 2008」カンファレンスでは、NotesをSAPアプリケーションのフロントエンドに仕立てるプロジェクト、「Atlantic」が紹介されている。意外だが、IBMとSAPでは初となる共同開発プロジェクトだ。今年第4四半期に登場する最初のリリースでは、SAPのワークフローやレポーティング&アナリティクスにNotesからアクセスできるようになるという。

 「SAP NetWeaverだけでは解決しきれない企業顧客の複雑な課題にIBMのケイパビリティを活用したい」と安瀬氏は話す。

刀根猛(とね たけし)アソシエイトパートナー 「イノベーション・ラボ for エンタープライズSOAのプライベートワークショップは、顧客企業ごとに少人数で行われ、“わが社の情報システムはどう変わるのか?”といった中身の濃い議論が交わされる」

 さらに刀根氏によれば、イノベーション・ラボ for エンタープライズSOAのサービスを通じて、SOAアプローチによるシステムの再構築を具体的に検討し始めると、企業顧客はすぐに新たな壁に直面するという。「計画だけでなく、実際の開発や運用保守にも関心が移ると、新たな課題が見えてくるからだ」と刀根氏。SOA対応の方法論や設計技法、SOAガバナンス、セキュリティ、堅牢なシステム構成などがそれだ。

 刀根氏は、「SOAを実践していくためには、SOA基盤を構成する水平統合の機能を検討するだけでなく、プロジェクトの進め方やサービスの管理、セキュリティ、BCP(ビジネス継続計画)など、運用フェーズも含めた、より立体的な検討モデルが必要だ」とし、IBMやIBCSが提供できる高い価値こそが顧客の課題解決につながることを強調する(WebCast「エンタープライズSOA実践の課題と解決策」(日本IBM)はこちらで参照できる)。

IBCSが活用するSOA検討モデル SOAを実践するためには、単に平面的な技術要素を検討するだけでなく、キューブ型のモデルによってより立体的に検討を加える必要がある

本来の狙いは「業務改革」「経営改革」のはず

 SAPの導入によって経営の状況をリアルタイムで把握できる基盤を整えたものの、「せっかく正規化された情報の戦略的活用が不十分なまま」というユーザー企業の話をしばしば聞く。また、稼働まで数年を要し、ERPパッケージを導入すること自体が目的化してしまったというケースすらある。

 「ひとつの戦略が競争優位を維持できるのは平均で2年半に過ぎないという分析結果もある。企業を取り巻く環境の変化に機敏に対応して戦略を見直し、プロセスやリソース配分などを最適化するリアルタイム経営が欠かせないのに、ERPは稼働したが、その情報をどう活用していいのか悩んでいる企業は多い」と安瀬氏。

 この3月、IBCSは「Post IT Transformation」(PIT)と呼ばれるサービスを発表し、ERP導入後の企業が収集可能となった情報を経営戦略策定に有効活用できるよう、バリュー・デリバリー・センターと戦略コンサルティングサービスの部門が共同でチームを組織し、支援を始めた。

 安瀬氏は、「ERP導入の本来の狙いは業務改革やその先にある経営改革にある。そこまで支援できるのが、IBCSの強み」と話す。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ