冗長化すべきか否かの判断基準ITIL Managerの視点から(3/3 ページ)

» 2008年07月09日 08時00分 公開
[谷誠之,ITmedia]
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SPOF(Single Point Of Failure)

 「可用性を高めよう。ではどこの可用性を高めるのが先決だろうか」といった話題でよく出てくるのがこの「SPOF」という用語である。日本語では「単一障害点」などと訳される。

 ある辞書には「システム上のある1点が故障することによってそのシステム全体が障害に陥ってしまうような部分のこと」とある。ここが壊れてしまっては、そのシステム全体が壊れたのと同じぐらいのインパクトを与える部分、という意味である。SPOFをなくすために冗長構成をしましょう、というのが常套句である。

 しかし、よく考えると(いや、よく考えなくても……)、重要なシステムは全体がSPOFだらけなのだ。CPU、HDD、ネットワークアダプタ、ネットワークケーブル、HUB、電源装置、どれをとっても「壊れても大丈夫」なものはない。結局は電源を2重化し、HDDを二重化し、ネットワークを二重化し、そうしてできたサーバそのものを2重化し……、という涙ぐましい努力が続けられている。

 SPOFこそ、VBFを主体に考えるべきではないだろうか。例えばeコマースサイトの場合、VBFであるところの「商品を注文する」という機能に必要なところは必要かつ十分な多重化を試みるほうがよいだろう。一方、VBFではない部分に関する機能は、あえてサーバやネットワークを分けて、多重化の対象にしないという決断も必要ではないか、と考える。サーバの仮想化技術も進んできた昨今、局所的な多重化は不可能なことではない。常に「ビジネスにとって何が重要なのか」という観点でモノを見る目を養う必要があるのだ。

谷 誠之(たに ともゆき)

IT技術教育、対人能力育成教育のスペシャリストとして約20年に渡り活動中。テクニカルエンジニア(システム管理)、MCSE、ITIL Manager、COBIT Foundation、話しことば協会認定講師、交流分析士1級などの資格や認定を持つ。なおITIL Manager有資格者は国内に約200名のみ。「ITと人材はビジネスの両輪である」が持論。ブログ→谷誠之の「カラスは白いかもしれない」


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