中堅中小企業の経営基盤改革術

NGNが新ビジネスを作り出すプレミアム会員から仮想空間まで(2/3 ページ)

» 2008年07月09日 16時38分 公開
[林雅之,ITmedia]

考えられるさまざまな新ビジネス

  • 新分野――仮想空間が新たなビジネスチャンスに

 NTTは、5月8日、NTTとngiグループの業務・資本提携を発表した。今年の10月には、ngiグループの子会社である3Diが、企業独自の世界を表現できるビジネス向け仮想空間プラットフォーム「3Di OpenSim」を提供する予定だ。これまでのインターネット経由による仮想空間の利用は、アクセスが集中する時間帯に映像が遅延する場合があった。なりすましなどによるトラブルが生じるリスクもあり、ユーザーも企業も導入に慎重にならざるを得ないケースも見受けられた。

 NGN経由で仮想空間を利用することになれば、回線認証によりセキュリティ部分が強化され、高品質で安定した映像や音声を利用できるようになる。SDPにより認証や課金の仕組みも充実する可能性がある。これまで、仮想空間に慎重だった企業が、NGN普及を契機に新たに参入しようとするきかっけになり、仮想空間内での新たなビジネスが生まれる可能性も考えられる。

3Di社のOpenSim(仮想空間での著名なオープンソースコミュニティー)によるお金のやり取りのイメージ図
  • 新分野――高品質な通話と通信

 NGNの特徴の1つに音声の品質がある。通常の電話網では3.4kHzまでで伝送される音声通話の帯域が7KHzまで拡大され、音声品質を向上させている。高齢者向けの電話受付など高品質の音声電話ならではのサービスが生まれる可能性はある。

 自宅から株価などの金融情報配信の高度化、映像を駆使したオンラインサポート、動画や音楽放送配信ビジネス、NGN対応のIP電話サービス、五感ネットワークなど、QOS(帯域制御)機能などの通信品質向上をフルに生かしたビジネスが新たに生まれる可能性がある。

  • 新分野――公共分野のICT化

 日本においては、自治体などの行政分野、教育や医療などの公共分野におけるICTの活用が先進的な国と比べて遅れている。行政分野においては電子申請、教育分野は校務システム、医療は遠隔医療や地域連携など、高品質でセキュリティの高いネットワーク、そしてオープンなインタフェースが公共分野でのICTの活用を高めていく可能性が考えられる。また、高齢者や児童見守り、防災などの安全安心分野での普及も期待されている。

  • 新分野――広告ビジネス

 NGNの普及に伴い、商業施設や交通機関の社内などの自宅以外のディスプレイに広告を配信するデジタルサイネージ(電子看板)の市場が一気に拡大する可能性が考えられる。デジタルサイネージでは、人の集まる人の属性にあわせて適切なコンテンツを検索・配信することができる技術も開発されており、NGNの高品質で安定した回線で確実に配信することができれば、効果的なプロモーションが可能になるであろう。

  • 新分野――プレミアム会員向けビジネス

 インターネットの世界では無料サービスが浸透してきている。例えば、Googleの多くのサービスを無料で利用できることは消費者にとってはありがたい。つまり、インターネットの世界では、アフィリエイトをはじめ広告ビジネスが主流となっているのが現状だ。

 しかし、ユーザーやサービスによっては、もっと高セキュリティや高品質を求めるケースも多いのではないだろうか。そういった意味でインターネットの無料版と、NGNの高セキュリティ、高品質の有料によるプレミアムサービスと使い分けによる新たな収益モデルが生まれる可能性は十分に考えられる。

  • 新分野――ユビキタスビジネス

 NGNが普及すれば、FMC(Fixed Mobile Convergence)と呼ばれるように固定ネットワークと携帯端末との連携が容易になる。位置情報や行動連鎖型検索など、ユビキタス環境下における新たなビジネスモデルが生まれる可能性がある。

オススメ関連記事 -PR-

SAP改革をトップに説き伏せる方法

アメニティーズは長野県を中心に17店舗のパチンコ店を展開する。競合他社もあり楽観できない経営環境だった。遊技台はデジタル化が進む中で、個別の遊戯台に掛かるコストを低減し、利益を増やし、遊技台の「労働生産性」を高める工夫が必要だ。バラバラだった同社のITをSAPで最適化する取り組みを開始した。


至れり尽くせりのシステムを捨てた――TOMOEGAWAの勝算

TOMOEGAWAは日本における産業用特殊紙のパイオニア。最近では半導体関連製品など先端分野の材料も開発する。同社はSAP ERPにより、ビジネススピードを飛躍的に向上させたという。「至れり尽くせり」で「つぎはぎだらけ」だったシステムをどのように刷新したのか。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ