プロセッサ事業を見直すAMD選択と集中(1/2 ページ)

AMDのヘクター・ルイズCEOが退任し、ダーク・マイヤー社長が同社の舵取りを引き継ぐ。それに伴い、AMDはサーバとPC向けのチップ、低価格ノートPC市場向けのプロセッサにフォーカスした堅実な目標を目指す。

» 2008年07月22日 10時05分 公開
[Scott Ferguson,eWEEK]
eWEEK

 Advanced Micro Devices(AMD)のヘクター・ルイズ元CEOが2002年に経営のトップの座に就いたとき、小さいながらも革新的なチップメーカーにとって野心的な目標に事欠くことはなかった。

 AMDのCEOとしての6年間の在任中、ルイズ氏はOpteronの開発を統括した。このプロセッサは下位互換性と統合型メモリコントローラが奏功して、うま味のあるマルチソケットシステム市場に同社が進出する道を切り開いた。Intelが自社のItaniumチップで新アーキテクチャを推進していたとき、Opteronは魅力的な対抗製品として注目され、x86市場におけるAMDのシェア拡大に貢献するとともに、Intelにロードマップの見直しを余儀なくさせた。

 ルイズ氏は同時に、Intelが市場での支配的地位を悪用しているとする批判の急先鋒に立った。この戦いは、韓国、日本、欧州連合、そして最近では米連邦取引委員会による調査につながる結果となった。

 ルイズ氏がCEOオフィスを去り、同氏が選んだ後継者のダーク・マイヤー社長が同社の業務統括を引き継いだ今、AMDがほんの数年前に抱いていた野心的な姿勢は影を潜めたようだ。

 AMDは7月17日、7四半期連続の赤字決算を発表した。また同社は、2006年のATI買収に伴って引き継いだコンシューマーエレクトロニクス事業部を切り捨てる方針だ。ルイズ氏の功績は評価に値するものの、技術的な問題で2007年にクアッドコアOpteronのリリースが遅れたことでAMDは大きくつまずき、ATIの買収でAMDが支払った56億ドルは2年間近くにわたって同社の収支に悪影響を及ぼしている。

 アナリストとの電話会見の中でマイヤー氏は、AMDのチップ研究開発の目標として、同社のコアPC/サーバ向け製品ならびにノートPCとデスクトップ用のグラフィックス技術に再びフォーカスすることを明らかにした。

 技術者出身でPC向けのAthlonプロセッサの開発にも貢献したマイヤー氏は「ボリューム製品分野のスイートスポットに、もう少し照準を絞り込む必要があると思う」と語った。

 この会見でマイヤー氏は「IntelはAMDよりも多くの資金とリソースを持っており、この現実ゆえに、AMDは限られたリソースをどの市場に投入するかという厳しい判断を迫られるかもしれない」と何度か繰り返した。マイヤー氏とルイズ氏はともに、2008年末までにAMDの経営を黒字に復帰させると約束している。

 Deutsche Bankのアナリスト、ロス・シーモー氏は7月18日付の調査メモで、「この間の厳しい時期がいよいよ、非コア事業からの撤退、経営陣の刷新、そして自社の資金力に応じたフォーカスの絞り込みをAMDに迫っているようだ」と指摘している。

 AMDは事業を縮小してはいるものの、2008年と2009年に幾つかの製品のリリースを計画している。その第1弾となるのが、45nm版Opteronの「Shanghai」で、今年末にボリューム出荷される予定だ。Shanghaiの次にAMDが予定しているのは「Accelerated Computing」と呼ばれる技術。これは、CPUとGPU(グラフィックプロセッサ)を同一シリコンチップ上に統合したもの。マイヤー氏によると、この技術を採用した最初のチップは、2009年に顧客向けにサンプル出荷が始まる予定だという。

 さらにマイヤー氏は電話会見の中で、AMDが低価格のノートPC市場に参入し、NetbookとMID(モバイルインターネットデバイス)の分野でIntelのAtomプロセッサに対抗する可能性も示唆した。同氏は製品名を発表しなかったが、AMDは11月のアナリストミーティングで新チップの詳細を明らかにする予定だとした。

 The Registerの7月18日付の報道によると、マイヤー氏が言及したチップは「Bobcat」と呼ばれる製品で、AMDは2007年ごろにその存在を明らかにしたが、それ以降、同社がそれを話題にすることはほとんどなかった。この市場へのAMDの参入が成功するかどうかは不明であり、IntelでさえもAtomプロセッサをめぐる懐疑論にさらされており、同社がこれらのチップでうま味のある市場を創出できるかどうか疑問だという声がある。

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