君臨するリーダーはいない――携帯Webで迅速、正確なサービスを医療機器フィールドサービス企業の情報共有(2/3 ページ)

» 2008年07月22日 17時40分 公開
[杉浦知子,ITmedia]

Web上で情報共有をする――全てはここから始まった

 IT化を迫られた状況について、白柳氏はこう話す。「1998年に私が当社の経営に参画した当時は、紙台帳の顧客データを『Microsoft Office Access』でデータベース化して管理していました。当時はインフラが整備されていなかったので、Microsoft Office Accessでデータベースを作っても、国立、北本、横浜にある3つの営業所間での顧客データの共有ができませんでした。また、顧客数と顧客を持つ地域の拡大にともない、管理しなければならない情報が増えてきました。どの機械をどこに導入したのかだけでなく、いつ導入し、今どんな状態かを迅速に把握する仕組みが求められていたのです。“Webで情報共有をする”、全てのシステム構築はここからスタートしています」

 まず、顧客データのオンラインデータベース化に取り組むことが不可欠だった。「代表的なデータベース製品も考えたのですが膨大な予算が必要でした。しかし、当時の最優先課題はデータベース構築を“スタート”させることでしたので、予算が手ごろで必要最低限の機能がそろったサイボウズの製品がちょうどよかったのです」と白柳氏はサイボウズ製品を選択した理由を話した。現在利用しているサイボウズのWebデータベースの前身、「DBメーカー」を導入した。DBメーカーを導入後、Microsoft Office Accessで構築した顧客データのデータベースを、DBメーカーを使ってオンラインデータベース化していった。

 その当時は業務にポケットベルを使っていた。顧客から入電があると、受付者はDBメーカーで構築したデータベースから顧客情報を呼び出して確認。現場にいる担当スタッフとポケットベルを使って連絡をとり、連絡を受けた担当スタッフは音声通話で顧客に連絡をし、必要があれば現場に向かう。業務終了後、現場の担当スタッフは作業内容を再びデータベースに入力し、顧客情報を更新するという流れで業務を行なっていた。しばらくして、操作性と機能性の観点から、ポケットベルの使用を廃止し、音声通話に頼らず、履歴を残せる携帯電話メールへと切り替えた。これまでのポケットベルでのやり取りと比べて対応時間が早くなったという。

 2005年にCTI(Computer Telephony Integration)を導入した。国立、北本、横浜の3つの営業所ごとに電話を受けて対応する体制をやめ、中央1カ所で電話を受ける体制に変更した。CTIを利用すれば電話がかかってきた時点で顧客情報を表示することができる。デヂエと連動させることで、名前や電話番号以外にも導入している機種名といった詳細な顧客情報をポップアップで表示させることができる。「電話がかかってきた時点で顧客情報が分かれば、お客様とわたしども双方のストレスが変わるんです」と白柳氏。1日にかかってくる修理依頼のコールは、30〜50件くらい。現在は2人で電話を受けている。

東京富士サービスが構築した現在の入電管理の構造

デヂエの活用法

 DBメーカーのバージョンアップにともない、Webデータベースを「サイボウズ デヂエ」へと移行した。「グループウェアでのスケジュール管理は必須だった」(白柳氏)ため、DBメーカーと同時に導入していた「サイボウス Office 4」もバージョンアップを重ね、現在は「サイボウズ Office 7」を使用している。それでは現在、東京富士サービスはどのようにデヂエとOffice 7を活用しているのだろうか。

 顧客からの電話を受ける受付者が、サイボウズ Office 7の機能の1つである「電話メモ」に電話の詳細を書き込む。電話メモに登録された内容は所定のメールアドレスへ自動的に転送される。

 電話メモは、担当者の携帯電話と、同じ担当地域のスタッフ全員にもメーリングリストを介して配信される。担当者本人には2通メールが届くため、2通同時にメールが入れば自分あてだとすぐに分かる。迅速な対応が直感的に可能という。次に、メールを受け取った担当者が対応の可否について返信する。その返信は地域担当スタッフだけでなくメーリングリストを介して全社員に配信される。

 入電から現場での対応までの流れを全社員が共有できる仕組みだ。そのため、担当者本人が動くことができなくても、その案件の状態が分かっているほかのスタッフが担当者の代わりに対応することができる。白柳氏は「受け取ったか受け取ってないか、電話メモに返信をすることで判断できます。ルールとして、引用を残すことにしています。やり取りの返信を全員に共有することになるため、後で問い合わせがあったときに、誰でも対応できます」と入電管理の仕組みを話す。1日で何が起きたか、拠点が違っても誰でも分かる仕組みだ。

 「もともと1人のスタッフが送信確認をしていたのですが、システム上の不具合などで発信されてないことがあっても気づくことができなかったんです。そこで発信の履歴を残すことが必要になりました。発信に対して返信がなかったら、発信されていないことが分かります。返信があれば発信の確認がとれるので、受け取った人は行ける・行けないにかかわらず返信をすることを義務づけています」と白柳氏は社内ルールについて説明する。“電話メモを受け取った”という情報を全員に配信することが大切だという。

 東京富士サービスは、PCではなく携帯電話を使った連絡のやり取りを選択した。30人近くのスタッフは外に出ていることが多いため、携帯でスケジュール把握から電話メモの確認までできる。「極力音声通話でのやり取りはしないようにしています。記録を残すことが大切なので」(白柳氏)。スケジュールはOffice 7で管理している。

 デヂエのデータベースログも活用している。電話メモに登録しているメーリングリストにデヂエ登録用のメールアドレスを組み込むことで自動的にメールのやりとりの記録を残している。ログを残すことで、顧客の医療施設の詳細だけでなくスタッフの負荷率も分かるという。「マネジメント面でも生かすことができています。スタッフの負荷を把握することで、スタッフの担当地域の見直しにも役立っています」(白柳氏)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ