中堅中小企業の経営基盤改革術

社員が育つ――中堅中小企業の評価制度設計の進め方人事戦略コンサルタントの提言(3)(5/5 ページ)

» 2008年07月28日 08時00分 公開
[三城雄児,ベリングポイント]
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ステップ5 周知徹底

 人事評価制度の導入プロジェクトで最も重要なステップは、新制度に関する社員とのコミュニケーション(周知)の実施と段階的な意識改革(徹底)への取り組みである。効果が上がらず失敗に終わる人事評価制度導入プロジェクトの大部分は、コミュニケーションプランの不備が原因であると、わたしは考えている。多様な価値観を持つ社員に新しい考え方を理解させ、納得・共感してもらうためには、コミュニケーションプランの策定が不可欠だ。

 コミュニケーションプランを策定する際には、目的・キーメッセージの決定、受け手・送り手の決定、時期・頻度の決定、チャネル(媒体)の選択、フィードバックプランの策定とさまざまな項目を検討する【図7】。

【図7】コミュニケーションプラン策定のプロセスと留意すべき事項

 また、周知徹底の際には順に認知、習得、自覚、行動の4つのフェーズに分けて施策を展開する【図8】。この順序を間違えてしまうと改革は失敗に終わる。各ステップに必要なコミュニケーションプランを考え、順序を間違えずに改革をすすめることが重要である。それぞれのフェーズには、意識変化を妨げるコミュニケーションの障壁が存在する。障壁が取り除かれるまでは次のフェーズに入らないことがポイントだ。

 例えば、新しいコンピテンシー評価の基準を入れる際には、そのコンピテンシー評価のやり方を説明する資料を配る前に、ほとんどの社員がコンピテンシーの導入に対して期待している状態を作っておくことが必要だ。最初に、制度のやり方を説明してしまうと、「面倒な作業が増えた」「何のためにやるのか分からない」といった反応を受けるのがオチである。

 まずはプロジェクトの発足時に、このプロジェクトがどういういきさつで発生し、コンピテンシーを導入することでどういう効果が期待できるのか、人事部門は、経営者から現場の末端の従業員に至るまで、幅広く説明責任を果たさなければならない。現場の社員が制度の導入に対して、期待を抱くようになってから初めて、新しい制度の運用方法を説明するようにしないと、反発を招くだけである。

【図8】社員の意識変化のプロセスと効果的なコミュニケーション施策

 認知、習得、自覚、行動の4つのフェーズを一つずつ実行していくことで、現場の社員の意識変化が段階的に行われる。あせらずじっくりと理解を得る、粘り強い姿勢が経営者や人事部門には必要である。

 次回の第4回では、中堅中小企業のICT戦略について解説する。

著者プロフィール:三城雄児 ベリングポイント 組織・人事戦略チーム マネージャー

組織・人事戦略の構築支援、企業理念・コア・バリュー浸透支援、人事制度構築・導入・運用支援、目標管理・業績管理体系の構築、企業内教育体制の整備、e-ラーニング導入・活用、管理職の意識改革、役員制度改革など、組織・人事にかかわるさまざまなコンサルティングプロジェクト経験を有する。また、組織・人事に関して、積極的な講演・執筆活動を行っている。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。


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