中堅中小企業の経営基盤改革術

ここで差がつく――人材管理におけるICT戦略人事戦略コンサルタントの提言(5/5 ページ)

» 2008年07月31日 12時57分 公開
[野石龍平(ベリングポイント),ITmedia]
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SaaS/ASPを利用し、ICTをより身近に活用する

 これまで述べてきたようなICT利用が、SaaS(サービスとしてのソフトウェア)/ASPによって、中堅中小企業にも身近なものとなってきている。最近はさまざまなITベンダーがこぞって、SaaSモデルでのサービスを打ち出している。

 SaaSとは、「特定及び不特定ユーザーが必要とするシステム機能を、ネットワークを通じて提供するサービス、あるいはそうしたサービスを提供するビジネスモデルのこと」である。

<図5 ASP/SaaSとは>

 昔から同様のサービス形態としてASP(Application Service Provider)型と呼ばれていたサービスはあった。個人的には2000年前後にe-ラーニングをASP型で提供するソリューション開発に従事した。当時はASP=中堅中小企業向けといったイメージは定着していなかったし、注目度も今ほどは高くなかった。現在のSaaSに対する注目度の高さは、「中堅中小企業の活性化」といううたい文句なしには語れないであろう。

 企業におけるSaaS/ASPの認知度は昨年の33.1%から58.3%と急増している。利用率は6.9%でまだ低水準だが、利用意向は10.7%となっており、今後の利用の拡大が予想される(財団法人インターネット協会「インターネット白書 2008」より)。

 利用率からも明らかな通り、まだ導入事例よりも提供側の論理が先行している段階である。中堅中小企業において導入を検討する際には、あまり提供者側の理論を鵜呑みにせずに、きちんと自社での活用目的を見定めて、導入する必要がある。また導入時に、どうしても判断がつかない場合には、われわれのようなコンサルタントを利用するのも一つの手段である。

 中堅中小企業の業績回復は、日本が元気になるには不可欠である。それらの企業がICTを活用して、業績を良化する上で本寄稿が少しでもヒントになれば幸いである。次回は連載の最終回として、企業理念、コアバリューの構築を通じた中堅中小企業の組織活性化について述べる。

著者プロフィール:野石龍平 ベリングポイント 組織・人事戦略チーム シニアコンサルタント

大手システムインテグレーターにて人材開発ソリューション企画や大規模人事システム構築を経験し、現職。制度設計から人事/e-ラーニングシステム構築まで、マネジメントとITの両面から企業の活性化を支援している。コンサルティング対象先クライアントは、中堅中小企業からグローバル企業まで幅広く、対象業種も製造業、通信業、公益法人を中心に多様な経験を持つ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。e-ラーニングコンソーシアム活用事例委員・調査委員。


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