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» 2008年08月02日 00時00分 UPDATE

行列の“できない”スパコン――防災科研の新システムが本格稼働を開始

防災科学技術研究所の新システムが本格稼働を開始した。Altix 4700を中心に構築されたシステムから出力されるデータは、4Kプロジェクタ2台を用いた高機能表示装置によって可視化が図られている。

[西尾泰三,ITmedia]

 茨城県・つくば市の独立行政法人 防災科学技術研究所(NIED)は、3月に発表していた新システムの導入を完了、本格稼働を開始した。今回のシステムを刷新するに当たって同研究所がパートナーに選んだのは日本SGI。

nied2.jpg NIED内部で本格稼働を開始したAltix 4700

 「災害に強い社会の構築」を目標に研究開発を行うNIED。地震や火山噴火、土砂災害といった自然災害について、観測データを基に高精度な災害情報を発信している。例えば、全国約800カ所の地下100メートル以深に設置された高感度地震計から得られるデータを基に整備した高感度地震観測網「Hi-net」のほか、マルチパラメータ(MP)レーダーを用いることで細かなメッシュでの降雨量分布を把握し、土砂災害発生予測支援システムに連携させるなどしてきた。

 防災関連のシステムを充実させてきたNIEDだが、大量のデータを基に詳細なシミュレーションを行うなどした場合、処理に数日、下手すると1週間近く掛かってしまうことも珍しくないという。かといって処理時間を短縮するために精度を荒くしては本末転倒となる。キューがどんどんたまっていく「行列のできるスパコン」では研究所の存在意義も問われかねない。処理性能の大幅な向上が新システムには求められていた。

4kプロジェクタ2台を用いた可視化の推進

 今回の稼働を開始した新システムは大きく「スパコンシステム」「高機能表示装置」「リアルタイムデータ処理装置」の3つに分けることができる。

 スパコンシステムの並列計算機部分にはデュアルコア インテル Itanuimプロセッサを2048コア、共有メモリ4Tバイトを搭載する日本SGIの「SGI Altix 4700」を、レンダリングクラスタおよびGPGPUクラスタとしてそれぞれ日本SGI Asterism、NVIDIA Teslaが用いられている。また、POWER6を搭載する日立のSR16000も4ノード使われている。ストレージ部分は日立のAMS1000がファイバチャネルで接続されており、ディスク容量は1.4Pバイトを越える。

nied1.jpg 1台のSRX-S110にはDVIマトリックススイッチャ経由で4系統のDVIが接続されている

 富士通のPRIMERGYシリーズを中心に構成されたリアルタイムデータ処理装置もさることながら、特徴的なのは高機能表示装置の部分だ。データ処理の高速化が求められる一方で、誰にでも分かりやすい形で可視化を図る必要もあるからだ。この部分は日本SGIのスケーラブル・ビジュアル・クラスタ「Asterism」と、ソニーの4KプロジェクタSONY SRX-S110 2台を中心に構成されており、150インチのハードスクリーンに映し出される。偏光立体視にも対応しており、多様な可視化ニーズへの対応も果たした。

 同システムの理論演算性能は13.59TFLOPS。スーパーコンピュータTop500の上位に位置するシステムなどと比べると突出して高い性能ではないが、それでも従来のシステムと比べれば20倍近い性能アップを果たしている。NIEDの防災システム研究センターでIT統括部長を務める佐藤一雄氏は、今回のシステム選定に当たってAMD Opteronの評価なども行ったというが、どちらかといえばCPUをどれにするかはささいな問題であり、CPUの理論演算性能よりメモリ容量の方が重要であると話す。同氏は、今回のシステムは4Tバイトの共有メモリを備えているが、それでもメモリリソースの不足によりCPUが非稼働状態になってしまうこともあるだろうと推測する。「理想をいえば2倍(8Tバイト)のメモリ容量があるとよかった。もっとも、理想をいえばきりがないのだが」(佐藤氏)

 Itanium 2のシステムを切望したというよりは、従来のシステムで実証された日本SGIの運用・支援体制、さらには可視化部分における同社のサポートが評価されたと考えるべきだろう。

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