新たな合従連衡を生むクラウドコンピューティングWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2008年08月04日 08時32分 公開
[松岡功ITmedia]
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どう動く? IBM、Microsoft

 すでにキープレーヤーたちは、クラウドコンピューティングの主導権争いに向けて着々と動き始めている。

 HP、Intel、Yahoo!の3社による共同プロジェクトに先駆けた合従連衡の動きとしてあげられるのは、GoogleとIBMが昨年10月に発表した大学向けクラウドコンピューティング推進プロジェクトだ。このプロジェクトにおいて、両社は共同で大学のコンピュータサイエンス学部にハードウェアやソフトウェア、サービスを提供。クラウドコンピューティングの中核技術である並列コンピューティングの研究を主な対象とし、資金面でも支援している。

 ちなみにIBMはその翌月、同社としてのクラウドコンピューティング推進計画である「Blue Cloud」を発表。今年2月には欧州の企業や大学と協力し、共同研究イニシアチブを立ち上げた。直近では先週の8月1日、日本IBMが同社の晴海事業所内に、IBMとして世界で5番目となるクラウドコンピューティングセンターを開設している。

 また、SaaSの先駆者としてオンデマンドCRMで急成長を遂げているSalesforce.comも、Googleとの協業によってクラウドコンピューティングの普及に努めている。その起点となっているのが、GoogleのオフィスアプリケーションとSalesforce.comのCRMを結合した「Salesforce for Google Apps」である。エンタープライズ向けのクラウドコンピューティングでは、この両社の取り組みが、アプリケーションおよびサービスという意味で最もわかりやすいといえる。

 このように流れを追っていくと、前述のHP、Intel、Yahoo!の3社による共同プロジェクトは、Googleを軸とした合従連衡に対抗した動きとも見て取れる。

 となると、対立の構図からしてもう1社、その動きが注目されるのがMicrosoftだ。Googleが一昨年来、盛んにクラウドコンピューティングを喧伝してきた中で、Microsoftはなかなか手の内を明かさなかった。同社のクラウドコンピューティング基盤である「Live Mesh」が、プレリリース版として米国の一般ユーザー向けに初めて公開されたのは今年7月中旬。10月にはLive Mesh上で動くアプリケーションやサービスの開発に必要なインタフェースなどを発表する予定だ。果たしてMicrosoftは、どのような合従連衡に打って出るのか。

 クラウドコンピューティングを提供するIT企業にとっては、資金力、技術力、サービス力など、これまで以上に総合力が問われることになる。また、どの程度の規模のクラウドまでが生き残れるのかも分からない。これまで幾多のパラダイムの変化とともに、さまざまな合従連衡が行われてきたIT業界だが、クラウド時代はかつてないほどのダイナミックな動きが巻き起こるのではないだろうか。これから10年、IT業界は歴史上で見ても最大の正念場を迎えるような気がする。

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プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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