ソフトウェアライセンスを把握――しかも社員に嫌われず良い管理者 悪い管理者 普通の管理者(2/5 ページ)

» 2008年08月08日 08時00分 公開
[木村尚義,ITmedia]

損害賠償1億円! ということも起こりうる

 さて、違法コピーと知りつつ使用をやめない場合には、どのような罰則を受けることになるのか。

 実例の事件としては、違法コピーと知りながら使用していた予備校に対して、1億1400万円の違法コピー損害賠償を請求された事例がある。会社組織の場合は、違法コピーによる信用力の低下は、深刻な問題だろう。また、企業での違法コピーが明らかになった場合、株主代表訴訟で経営者らに損害賠償を求められることもある。違法コピーは役員賠償責任保険で補てんできない可能性が高い。つまり、企業が違法コピーによって一時的に費用の支払いを免れたとしても、いずれは発覚し、損害賠償が発生することになる。

 違法と知りつつ不正を行った社員個人に対しても、また、システム管理者に対しても刑事訴訟および、民事訴訟がありえる。会社内で違法コピーが横行しているということは、個人情報保護法の対策ができていないということだ。個人情報保護には、社内にどんなソフトがあり、誰が使っていて、どのような情報が扱われているかという管理が必要になる。違法コピーが使われているということは、ソフトウェアの管理がなされていないことの証明となる。

 違法コピーを使っている場合は、ソフトウェアのサポートが受けられない。そのため、違法なソフトウェアに何らかの問題が発生したら、メーカーのヘルプデスクに連絡するわけにもいかず、会社の生産性が低下してしまうことにもつながるのだ。

今回の登場人物:田中一郎(人材派遣会社勤務)

 田中一郎はレンタヒューマン株式会社のシステム管理者である。人材派遣業のレンタヒューマンは、本社と支店をあわせ約500人の常勤者が全国の派遣登録社員を管理している。あるときレンタヒューマンでは、一部の社員が勝手にインストールしたアプリケーションが原因で、部署全体のコンピュータの動作が不安定になり、業務がしばらく滞った。そのためレンタヒューマンでは、この教訓をきっかけにして、社内のソフトウェア環境を整えることになった。管理されていないソフトウェアのインストールに配慮し、不正なインストールは一切許さない方針とした。

 そして、企業コンプライアンス(法令順守)の立場から違法コピーについても見直すことになった。幸いレンタヒューマンでは、違法コピーは見つからなかったが、今後も違法コピーを許さない社内体制を作ることになったのだ。継続的に対策するために、今までのように、なんとなく管理するのではなく、権限と権限の範囲を明確にするために、システム管理部門の一郎はソフトウェア資産管理の責任者に任命された。

 レンタヒューマンにおける一郎の使命は、次の条件を維持することである。

・購入ソフトウェア≧ハードウェア数

 レンタヒューマンのクライアントコンピュータ構成は、Windows XP Professionalが450台。しかし、旧OSであるWindows 2000 Professionalも、まだ合わせて50台ほど混在してしまっている。1人の社員がデスクトップとノートで、2台のクライアントコンピュータを使用することもある。このような環境で、違法コピーが起こらない環境を作る必要があるのだ。一郎が、下調べのためにWebサイトを巡回し、ソフトウェア資産管理コンソーシアムが示す指標を基に、違法コピーの管理モデルをレベル0からレベル5の6段階で考えてみた。その結果に一郎はがく然とした。レンタヒューマンはどう見てもレベル1以下である……。

レベル 段階 状況
0 管理が存在しない 方針、規程、手続きがまったく存在しない
1 初期/場当たり的な管理 方針、規程はなく、手続きは場当たり的で一貫性がない。または、手続きが継続的に実施されていない
2 反復可能 方針や規程、手続きが存在し、方針に従い一貫性のある規程、手続きが作成され、継続的に管理が実施されている。組織(企業)全体の方針、規程としては不十分
3 定義されている 組織全体の方針、規程、手続きが適切に定められ、文書化され重大な欠陥はない。しかし、適切な運用が行われているかは管理されていない
4 管理されている 定められた方針、規程、手続きに従ってソフトウェア資産管理が実施されていることがモニタリングされている。順守されていない場合、直ちに是正される。見直しは行われていない
5 最適化されている ソフトウェア資産を取り巻く環境の変化に対応し、最適なソフトウェア資産管理を実施するため、随時および定期的に、ソフトウェア資産管理の方針、規程、手続きの見直しを行っている

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