コラム
» 2008年08月08日 12時57分 UPDATE

IT Oasis:中小企業の逆流業務プロセスとIT志向 (1/2)

ITベンダーの中には中小企業をターゲット顧客に加えようと考えているところもある。銀行合併や省庁の民営移管、話題となった内部統制などが一段落すると大企業向けの提案も少なくなる。そこで中堅、中小企業を掘り起こしたいと考えるのかもしれないが…。

[齋藤順一,ITmedia]

マーケットとしての中小企業

 ITベンダーに籍を置く人の中には中小企業を見たことがない人も多い。中小企業とはどんなものか俯瞰的に見てみよう。

どの程度の中小企業がITを必要とするのか。会社数は中小企業白書に統計数値が載っている。

 個人事業を含まない非1次産業はおよそ150万社ある。その中でITベンダーのビジネスの対象になりそうな企業はどの程度だろうか。IT投資をするような企業には、内部および周辺に十分な情報が流れていなければならない。中小企業の中には小売業や飲食業のように接客が主な業務という業種もある。業務の重点が人間系にあるような業種ではITで置換できる仕事は少ない。社内を流れる情報がたくさんありそうなのは、製造業、建設業、運輸業あたりであろうか。これらの合計はおよそ60万社である。実際には廃業したのに届けを出していないとか、節税や財産分与など諸般の事情で中小企業が関連会社として中小企業を持っているケースもある。ペーパーカンパニーに近い。諸々を考慮すると実体のある会社数は少なくなるだろう。

 製造業ならどこでもIT導入に熱心かというとそうでもない。ひたすらモノ作りに特化して技術力で勝負している会社、規模が小さく従業員同士のコミュニケーションで組織の情報交換が完了してしまう会社などITの必然性が低い会社もある。私の経験で判断すると、ITを導入することが会社に役立つようなケースは10社に1社くらいではないだろうか。そうすると6万社である。これらの会社が毎年IT投資をするのかというとそんなことはない。5年に一度とか、長ければ10年に一度程度であろう。したがって、年間にIT投資をするのは1万社程度ということになろうか。

ITが経営革新に役立つ中小企業とは

 ITとは人間の知識の蓄積や意思決定に必要な情報を媒介する仕組みである。

 大企業では多数の従業員数を抱え、製品やサービスの種類も多様で、業務の工程や協力会社の数も多い。組織を考えても多くの事業所や営業所が点在し、海外展開しているケースもあり、直接的なコミュニケーションは難しい。また、基幹業務がモノを作りや直接サービス提供から、企画、開発、研究、マーケティングなどの間接的な仕事が主体になっている。こうした点から大企業においてはITの存在が会社の活動の前提であると言える。一方、中小企業ではどうか。

戦略を立てるための要件収集や戦略の遂行・展開、業務プロセスの中での情報伝達、組織内での情報交換などにおいて、十分な情報流が発生しなければIT導入の必然性は薄いことになる。

 製造業の業務プロセスを考えてみよう。仕入れる部品の種類や仕入れ先があまり多くなく、定常的であれば、仕入れ担当者はこうした情報を頭の中で処理できるので敢えてITを活用する必要はない。

 生産においても情報の大部分は差立て(生産指示書)や図面、検査要領書などに含まれる。ITが必要になる場面は工程を流れる仕掛品の管理や不良発生時の処理などである。こうしたところで情報を管理したいという要求があるかどうかがIT導入の是非となる。つまり仕入先、材料種類、工程数、生産ロット数が多いといったことがIT導入の動機となる。

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