このシステムを実現する上でNBCが直面した最大の問題は遅延だった。「もしNBCが当社のWAASシステムを利用しなければ、さらに400人ほどのスタッフを北京に派遣し、1カ月以上にわたって彼らの住居と食事を確保し、ロジスティクス問題に対処しなければならないだろう」とクリアン氏は語る。
450Mbpsのパイプラインのうち、35Mbpsはデータ送信用として確保され、残りはすべてビデオ送信用である。「WAASを使用すれば、このパフォーマンスをLANに匹敵する約140Mbpsに高めることができる。これによりNBCは、スタッフを在宅勤務させるのに十分なスピードをネットワークで確保することができる。これこそネットワークのパワーだ」とクリアン氏は話す。
NBCは太平洋を横断する光ファイバーパイプをリースしており、Ciscoはその両側で自社の大容量ルータとWAASエンジンを提供することにより、大量のトラフィックの高速転送を実現している。
クリアン氏によると、1980年代にインターネットが出現して以来用いられてきたインターネットパイプラインであるTCP/IPのデータ転送パフォーマンスは、距離が長くなるのに従って減衰するという。
「ニューヨークのオフィスにいて、ニュージャージーからのライブ放送を観ているときは、何の問題もないように思える。しかし中国でビデオを取り込み、それを長距離リンク経由で送信した場合、すべてが極端に遅くなってしまう」とクリアン氏は語る。
WAASシステムは、パイプを通る巨大なファイルの中で、ネットワーク上で繰り返し再送信される共通のデータを見つけ出す。WAASはこの共通データにタグを付け、それを一度だけ送信することによって転送速度を高める。
Ciscoは、自社独自のQoS(Quality of Service)ネットワーク仮想化ソフトウェアも利用している。このソフトウェアは、光ファイバーパイプの帯域幅を「整形」し、データビットの流れを良くすることができる管理可能なセグメントに分割するという。
「これらの技術がすべて連携すれば、大陸間でビデオを送信していても、ローカルで動作しているように見える」とクリアン氏は話す。
NBCの北京オリンピック放送の視聴者は、2200時間分のビデオに加え、3000時間のハイライト、巻き戻し映像、再放送、競技結果にデスクトップやノートPCからアクセスし、オンデマンドで再生することができる。スマートフォン上でビデオを観たり、結果を表示させたりするとも可能だ。
NBCは、バンクーバー(2010年)とロンドン(2012年)で開催される次期オリンピックでもテレビとIPキャスティングによる独占放映権を保有している。詳細はこちら。
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