CRMの新潮流

コンタクトセンターの業務効率化の鍵は「見える化」CRMの新潮流

富士通が開設しているコンタクトセンターは、現在、複数カ所に散在している。ただし、ここで得られた情報は一元化されナレッジとして蓄積されている。顧客に「次も富士通製品を」と思わせる戦略は、簡便なナレッジ活用と見える化をベースにしている。

» 2008年08月13日 12時41分 公開
[ITmedia]

この記事はオンライン・ムックCRMの新潮流のコンテンツです。


進化するコールセンター

 富士通は2008年1月から、国内製造業で最大級の1400席の新コンタクトセンターシステムを構築した。同社の個人向けPC「FMVシリーズ」に関する購入相談から、技術相談、修理サービスといった広範囲なサポートを行う。

 このシステムは富士通のテレフォニーシステム「CL5000」をベースとし、これにSAPの「SAP Customer Relationship Management」を連携したものだ。SAP製品には「SAP NetWeaver Business Intelligence」という製品も含まれており、センター運営に関わる多種のDBや業務システムのデータを分析する機能を持っている。「CL5000」の導入によって業務系・音声系のシステム連携を実現している。国内4カ所に設置されているコンタクトセンターの業務分担をスムーズに行うことができるようになった。同社のコンタクトセンターは24時間稼働しているが、これまでは、相談電話が混みあったときに、各窓口構成の見直しに時間と手間がかかっていた。

 今回のシステムでは、業務分析にも大きな威力を発揮する。呼び出しはあったが、オペレーターにつながる前に切れてしまう電話の割合を呼損率というのだが、この割合を時間ごとに割り出し、原因を逐次分析して効率向上に努めているという。

 回線の問題なのか、オペレーターのスキル不足かなど、原因としてはさまざまなものが考えられるが、こうした原因は固定化されるものではなく、ケースごとに変化するものだから、常に迅速に分析をかけていく必要がある。同社では時間ごとの呼損率から、各オペレーターの処理効率を割り出し、さらに問い合わせの種類、製品の種類などをドリルダウンして分析していき、客観的な結論を引き出している。まさにコールセンターの進化の一例ともいえよう。

負のスパイラルは「見える化」で脱する

 富士通のこうした試みは、CRMという観点から言えば理想的なものに近いといえるだろう。システムを構築して、顧客からの問い合わせに対応はするが、さて、そこで集積されたデータをどう活用するかといった段になると、途端に効率が落ちてくることが多い。

 いまさらCRMなんて、と考える読者の中には、システム構築をしたもののデータ活用がうまく進まず、経営層に対して投資効果を評価させるだけのデータを提供できなかったという苦い経験があるかもしれない。しかし、ここにきてデータ活用のスピードは格段に上がってきているといえるだろう。「データを集めるまではジェット機並みのスピードだが、整理して分析する段階になるといきなりよちよち歩きになってしまう」というシステム担当者の『ぼやき』を聞いたことがある。富士通のケースで参考になるのは、さまざまな問題を逐次分析していること、つまり、「あとでまとめて検討してみましょう」というスタンスではないということだ。言い換えれば、コールごとの処理効率がすぐに分かることで、問題点の特定も迅速になり、対応もしやすくなるという好循環を生み出しているということだ。

 CRMは新しい潮流を作り出してきている。それは業務効率を向上させる仕組みをあらゆる角度から検討されてきたからだ。

 顧客との密接な関係を構築するためには、その入り口としてコンタクトセンターの充実は不可欠だった。それは今も変わらないが、コンタクトセンターの運営全体が効率化されなければ、データ分析も迅速にならず、それによってサービス向上が遅滞すれば、コールそのものも減少していく。

 こうした負のスパイラルを脱却する方法として挙げられるのは、「見える化」の実現だ。誰もが運用の流れを確認することができているか、コンタクトセンターをCRMにつなげたいと願うユーザーにとっては、大きなポイントとなるのではないだろうか。

過去のニュース一覧はこちら

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ