グリーンIT元年の今年はIBMが熱い、いや涼しい。グリーンIT化を支援するアセスメントやコンサルティングはもちろん、ハードやソフト、ファシリティまで幅広い内容のサービスや製品を取りそろえ、自社のみならず多くの顧客企業で省エネやコスト削減、CO2排出量削減の効果を挙げているという。
原油価格高騰の波はガソリン価格や航空運賃など直接の影響にとどまらず、さまざまな商品やサービスの価格を押し上げ、多くの人々に省エネ生活を強く意識させる結果となった。一方、温暖化が着実に進行していることを示すかのように、2007年夏には日本全国が猛暑となって関東地方では電力危機の一歩手前までに迫った。北極海の海氷が大きく失われたことも話題を呼んだ年だ。
2007年のノーベル平和賞も、紛争解決の取り組みなどでなく環境問題への取り組みに対して、前米国副大統領ゴア氏と気候変動に関する政府間パネル(IPCC)に与えられた。サミット(主要国首脳会議)でも温暖化対策をはじめとする環境問題は、2007年の独ハイリゲンダム、2008年洞爺湖と連続で重要議題の一つに挙げられた。多くの人々にとって環境問題やエネルギー問題が大きなものとして感じられるようになったのは、まさにここ1〜2年ほどの間だと言えるだろう。
もちろんITも、この流れと無縁ではいられない。各ベンダーともハードウェアの省電力化をはじめとした環境対策に取り組んでおり、ユーザー側も性能や価格などの評価基準に加えて消費電力や発熱量といった要素も重視するようになってきた。今年2008年は、グリーンIT元年とも言われるほどである。このような状況下、Computerworld Technology Researchが2月に発表したグリーンITに関する調査結果において「圧倒的なリーダー」として挙げられたのがIBMだ。
「IBMは2007年5月に、業界に先駆けてグリーンITの取り組みである『Project Big Green』をアナウンスした。あれから1年以上が経過して多くの実績もでき、人々の認知も得られるようになってきたと感じている。」と日本IBM サーバー・サービス SPL 阪口部長は話す。
この1年間でIBMは、ワールドワイドで2000社以上の顧客にグリーンIT関連のサービスや製品を提供し、平均40%以上のエネルギー節約を実現したという。自社内においても約3900台のサーバを仮想化によってメインフレーム約30台に統合しつつあるほか、米コロラド州ボルダーにはその冷涼な気候を生かして空調に必要な電力を削減するなどの工夫を凝らした新データセンターをオープンした。また、グリーンITに関連した新サービスや新製品も数多くリリースしている。
グリーンIT関連サービスや製品について、IBMでは次の図のように5つのアプローチで取り組んでいるという。
例えば、リストの最初に挙げられている「診断」アプローチ。まず、「データセンター・エネルギー効率アセスメント」は、データセンターの現状を調査した上で、エネルギー効率を向上させる電気設備や空調設備などの改善策を提示するサービスだ。
また、「データセンター3次元温度分布測定・最適化サービス」は、IBM基礎研究所が開発した温度測定技術を用いて短時間にデータセンター内の空間的な温度分布を調べ、その結果をもとに空調効率向上施策をコンサルテーションするという内容だ。詳細な温度分布状況を元に、例えば排熱が回り込んでいる部分を塞ぐなどの改善を行うことで、空調設備への大規模な改修を加えずに効率化できるという。「サーマル・シミュレーション・サービス」は、サーバ室内の熱解析シミュレーションを行って空調環境の改善案などを提示するという内容である。このシミュレーションは、IBMが持つサーバ内の気流シミュレーションの技術を応用したものだという。
日本IBM サイト・アンド・ファシリティ・サービスSPL 森崎リーダーは、「シミュレーションは入力するデータの質が重要。そのノウハウに長じた熱解析チームが携わっており、短期間に精度良く結果を出せる。このシミュレーションは、空調などの改修計画に伴って改修後の効果を検証する際にも役立つ」と説明する。
日本IBMでは、この「診断」アプローチを簡素化して、中堅・中小企業を対象としたグリーンIT化診断サービスを無料で提供中だ。
「このサービスでは、現状のハードウェア構成と、BladeCenter Sに置換えた場合とで、電力や空調などのファシリティコストについて比較したリポートを作成する。ユーザー企業は、省電力化がもたらすコスト削減効果がどのくらいなのか、このリポートを目安として今後のシステム投資に活用できるはず」
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